アルバニアのデジタルノマドビザとはじめに

アルバニアは2022年から「Unique Permit」と呼ばれるデジタルノマドビザプログラムを開始し、世界中のリモートワーカーに門戸を開きました。バルカン半島に位置するこの国は、美しいアドリア海とイオニア海に面し、物価の安さと豊かな自然環境で注目を集めています。特に日本人にとって、アルバニアのデジタルノマドビザは、ヨーロッパでの長期滞在を実現する魅力的な選択肢となっています。
アルバニアのデジタルノマドビザの最大の特徴は、ビザの有効期間が最大1年間で、さらに1年間の延長が可能な点です。つまり、最長2年間の滞在が可能となります。この期間設定は、多くの他国のデジタルノマドビザプログラムと比較しても非常に魅力的です。例えば、エストニアやドバイのデジタルノマドビザは1年間の滞在に限定されており、延長には制限があります。
他国のデジタルノマドビザと比較した際のアルバニアの優位性は、申請手続きの簡潔さにもあります。オンラインでの事前申請が可能で、必要書類も比較的少なく設定されています。また、ビザ申請料も他のヨーロッパ諸国と比較して低額に設定されており、初期費用を抑えたいデジタルノマドにとって大きなメリットとなっています。
経済的要件と収入証明の詳細

アルバニアのデジタルノマドビザを取得するための最も重要な要件の一つが、月収要件です。申請者は月額最低2,700ユーロ(約42万円)の安定した収入を証明する必要があります。この金額は、他のヨーロッパ諸国のデジタルノマドビザと比較すると中程度の水準です。例えば、ポルトガルのD8ビザでは月額約3,040ユーロ、チェコのデジタルノマドビザでは月額約5,600ユーロの収入証明が求められます。
収入源については、アルバニア国外の雇用主からの給与、フリーランスとしての収入、または自営業による収入が認められています。重要な点は、この収入がアルバニア国内の企業や個人からのものではないことです。つまり、日本の企業に所属しながらリモートワークをする会社員や、海外のクライアントを持つフリーランサーが対象となります。
収入証明の方法として、過去3〜6か月分の銀行取引明細書、雇用契約書、または取引先との契約書の提出が求められます。フリーランサーの場合は、複数のクライアントとの契約書や請求書、支払い証明書を組み合わせて必要な月収を証明することができます。また、十分な貯蓄がある場合は、銀行残高証明書も補足的な証明書類として使用できます。
アルバニアのデジタルノマドビザの特徴的な点として、収入要件に加えて、現地での生活費として追加の資金証明は求められません。これは、マルタやキプロスなどの他国のデジタルノマドビザが、収入要件に加えて一定額の貯蓄証明を求めることと対照的です。この点で、アルバニアのビザは比較的取得しやすい条件設定となっています。
居住要件と滞在期間の柔軟性

アルバニアのデジタルノマドビザは、滞在期間に関して非常に柔軟な条件を提供しています。ビザ保持者は、1年間の有効期間中、アルバニア国内に継続的に滞在する義務はありません。つまり、アルバニアを拠点としながら、他のヨーロッパ諸国やバルカン半島の近隣国を自由に旅行することが可能です。
シェンゲン協定との関係において、アルバニアは現在シェンゲン圏外であることが重要なポイントです。これは、デジタルノマドにとって実は有利な条件となります。通常、日本人は180日間のうち最大90日間シェンゲン圏に滞在できますが、アルバニアでの滞在日数はこの計算に含まれません。したがって、アルバニアのデジタルノマドビザを活用することで、シェンゲン圏とアルバニアを組み合わせた長期のヨーロッパ滞在が可能となります。
最低滞在日数の要件もありません。他国のデジタルノマドビザでは、年間の最低滞在日数が設定されている場合がありますが、アルバニアではそのような制限がないため、必要に応じて日本への一時帰国や他国への旅行を自由に計画できます。この柔軟性は、国際的なビジネスを展開するデジタルノマドや、家族の事情で定期的に帰国する必要がある人にとって大きな利点となります。
ビザの延長に関しても、アルバニアは寛容な姿勢を示しています。初回の1年間のビザ期間終了前に、さらに1年間の延長申請が可能です。延長申請時には、引き続き収入要件を満たしていることを証明する必要がありますが、新規申請時と比較して手続きは簡略化されています。この2年間という最大滞在期間は、多くのデジタルノマドにとって、現地での生活基盤を確立し、ビジネスネットワークを構築するのに十分な時間となります。
その他の重要な要件と特徴

アルバニアのデジタルノマドビザ申請には、健康保険への加入が必須要件となっています。保険は、アルバニア滞在期間全体をカバーし、医療費や緊急時の本国送還費用を含む包括的なものである必要があります。多くの国際的な旅行保険会社が、デジタルノマド向けの長期滞在保険を提供しており、これらはアルバニアのビザ要件を満たすことができます。日本の保険会社でも、海外長期滞在者向けのプランを提供している企業があります。
宿泊証明も重要な要件の一つです。申請時には、アルバニアでの滞在先を証明する書類の提出が求められます。これは、ホテルの予約確認書、賃貸契約書、または現地の知人からの招待状などが該当します。ただし、多くのデジタルノマドは最初の数週間分の宿泊予約を提出し、現地到着後に長期的な住居を探すという方法を取っています。アルバニアの不動産市場は比較的柔軟で、短期から長期まで様々な賃貸オプションが利用可能です。
犯罪歴証明書の提出も必要ですが、アルバニアは比較的新しい証明書でなくても受け入れる傾向があります。通常、申請日から6か月以内に発行された無犯罪証明書が有効とされます。日本では警察署で取得でき、アポスティーユ認証を受ける必要があります。
アルバニアのデジタルノマドビザの大きな魅力の一つは、現地での税制優遇措置です。デジタルノマドビザ保持者は、アルバニア国外からの収入に対して、アルバニアでの所得税が免除される可能性があります。ただし、この税制優遇を受けるためには、特定の条件を満たす必要があり、日本との租税条約との関係も考慮する必要があります。これは他の多くの国のデジタルノマドビザプログラムにはない、アルバニア独自の大きなメリットといえるでしょう。