カリブ海の秘宝：アンギラという選択肢
白い砂浜と透明度の高いコバルトブルーの海。アンギラは、カリブ海に浮かぶイギリス領の小さな島国です。面積はわずか91平方キロメートルながら、33もの美しいビーチを有するこの島は、ハリウッドセレブリティたちの隠れ家として長年親しまれてきました。そして今、世界中のデジタルノマドにとっての新たな移住先として注目を集めています。
アンギラは、2020年に「Beyond Extraordinary Anguilla（比類なきアンギラの魅力）」と名付けられたデジタルノマドビザプログラムを導入しました。このプログラムは、パンデミック後の観光産業回復と、長期滞在者による地域経済活性化を目的としています。リモートワークが一般化した今、世界中の人々が働く場所を自由に選べるようになり、アンギラはその選択肢の一つとして存在感を示しています。
特筆すべきは、アンギラが個人所得税、資本利得税、相続税などの直接税を一切課さない「タックスヘイブン」としての側面を持っていることです。デジタルノマドビザ保持者は現地での所得税が免除され、国外からの収入に対して0%の税率が適用されます。これは他のカリブ諸国や世界各国のデジタルノマドビザと比較しても、非常に魅力的な条件と言えるでしょう。
ただし、アンギラはEUの「非協力的な税管轄区域」のブラックリストに掲載されている点には注意が必要です。また、島内での生活費は比較的高めで、特に宿泊施設や食料品の価格は他のカリブ諸国よりも高い傾向にあります。しかし、その分、混雑が少なく、静かでプライベート感のある環境が保証されています。
「Beyond Extraordinary Anguilla」プログラムの概要
アンギラのデジタルノマドビザは、正式には「Beyond Extraordinary Anguilla」プログラムと呼ばれ、リモートワーカーとその家族、さらにはオンライン授業を受ける学生にも門戸を開いています。このビザの最大の特徴は、91日から12ヶ月間の長期滞在が認められることです。通常の観光ビザでは最長90日までの滞在しか許可されないため、より長期的な滞在を望むデジタルノマドにとって、このプログラムは理想的な選択肢となります。
申請プロセスは比較的シンプルで、オンラインで完結します。公式ウェブサイトから「Work From Anguilla - Digital Nomad」の申請フォームにアクセスし、アカウントを作成後、必要書類をアップロードし、申請料を支払うという流れです。審査期間は7〜14営業日と短く、迅速な対応が期待できます。ただし、申請は少なくとも渡航予定日の7日前までに行うことが推奨されています。
申請料は個人の場合2,000米ドル、4人までの家族の場合は3,000米ドルとなっています。4人を超える家族の場合、追加の家族一人につき250米ドルが加算されます。この料金は、他のカリブ諸国のデジタルノマドビザと比較すると若干高めですが、所得税免除というメリットを考慮すれば、長期滞在者にとっては十分に価値のある投資と言えるでしょう。
このビザを取得するための条件として、最低年収の要件は明確に設定されていません。ただし、アンギラでの滞在をサポートするための十分な資金があることを証明する必要があります。また、COVID-19の医療費や入院、医師の診察、処方箋、航空救急車などをカバーする医療保険への加入が必須条件となっています。
申請手続きと必要書類
アンギラのデジタルノマドビザを申請するにあたり、準備すべき書類は複数あります。まず、有効なパスポートが必要です。パスポートはアンギラ出国予定日より少なくとも6ヶ月以上の有効期限が残っている必要があります。次に、雇用証明書または事業設立証明書を提出し、リモートワーカーとしての身分を証明します。会社員の場合は雇用契約書、フリーランスの場合は事業登録書類、学生の場合は教育機関からの在籍証明書が必要です。
さらに、過去6ヶ月以内に発行された犯罪経歴証明書（18歳以上の申請者全員）、医療保険の加入証明書、および家族を帯同する場合は関係証明書（結婚証明書や出生証明書など）が求められます。これらの書類はすべてスキャンしてデジタル化し、申請フォームと共にオンラインで提出します。書類の準備は時間がかかる場合があるため、余裕を持って進めることをお勧めします。
申請後、7〜14営業日以内に審査結果が通知されます。承認された場合、「Work from Anguilla Certificate（アンギラ就労証明書）」が発行され、これにより最長12ヶ月間のアンギラ滞在が認められます。このビザの有効期間を延長することはできませんが、一度出国し、6ヶ月間の間隔を空けた後に再申請することは可能です。ビザの取得回数に制限はなく、条件を満たしていれば何度でも申請できます。
入国時には、有効なパスポート、「Work from Anguilla Certificate」、および国によっては入国ビザが必要となります。日本国籍保持者はアンギラ入国にあたりビザは不要ですが、入国審査官への説明のため、証明書は必ず携行しましょう。また、入国時には個人所持品に対する関税が課される場合があるため、新品の商品を多く持ち込む場合は注意が必要です。
アンギラでのデジタルノマド生活
アンギラでのデジタルノマド生活は、穏やかな気候と美しい自然環境に恵まれ、ストレスの少ない理想的な環境を提供してくれます。島内には30以上の食料品店やコンビニエンスストアがあり、日常生活に必要なものの調達は比較的容易です。インターネット環境も整っており、通信速度は平均75.38MBpsと、リモートワークに十分な速度が確保されています。島内の通信会社は手頃な価格の高速インターネットパッケージを提供しており、オンライン決済も可能です。
住居に関しては、高級リゾートから個人の別荘まで、様々な選択肢があります。アンギラのデジタルノマドビザプログラムは、承認された宿泊施設のリストを公式ウェブサイトで公開しており、滞在先選びの参考になります。ただし、ビザ申請時には宿泊施設の予約証明書が必要となるため、事前に滞在先を確保しておく必要があります。長期滞在の場合、月単位の賃貸物件を探すことでコストを抑えることも可能です。
医療面では、アンギラはプリンセス・アレクサンドラ病院を中心に、緊急性のない医療ケースに対応可能な体制を整えています。ただし、生命を脅かすような緊急医療の場合、隣接するセントマーチン島やプエルトリコ、アメリカ本土への医療搬送が行われることもあります。そのため、包括的な医療保険への加入は非常に重要です。
アンギラは一般的に安全な島ですが、基本的な防犯対策は怠らないようにしましょう。特に夜間の人気のない場所への一人での外出は避け、貴重品の管理には十分注意することが大切です。なお、交通面では左側通行であり、日本と同じルールです。島内には小さな国際空港がありますが、多くの場合、隣接するセントマーチン島の空港を利用し、そこからフェリーでアンギラに渡るルートが一般的です。セントマーチン島からアンギラまでは高速船で約20分の距離です。
