カーボベルデのデジタルノマドビザ導入の背景と基本情報 - HAPIVERI

カーボベルデのデジタルノマドビザ導入の背景と基本情報

カーボベルデという国とデジタルノマド政策の誕生

カーボベルデという国とデジタルノマド政策の誕生

アフリカ大陸の西、大西洋に浮かぶ小さな島国カーボベルデ。ポルトガルの旧植民地であるこの国は、総人口約55万人の火山島からなる群島国家です。サントアンタン島、サンビセンテ島、サンティアゴ島など10の島々で構成され、ヨーロッパから約6時間、アメリカ東海岸からも同程度の飛行時間に位置しています。アフリカ大陸本土からは640km離れた大西洋上に位置するという地理的特性を持ちます。

この島国が2020年以降、デジタルノマドと呼ばれるリモートワーカーたちの注目を集めるようになった理由は、同国が導入したリモートワーキングビザ制度にあります。カーボベルデ政府は新型コロナウイルスの世界的流行によって打撃を受けた観光産業の回復と、国の経済多角化を目指し、デジタルノマドを積極的に受け入れる政策へと舵を切りました。

カーボベルデ政府がデジタルノマドビザを導入した背景には、国の主要産業である観光業の立て直しという側面があります。国内総生産(GDP)の約25%を観光に依存していたカーボベルデにとって、パンデミックによる国際観光客の急減は経済に深刻な打撃を与えました。このような状況下で、長期滞在者としてのデジタルノマドを誘致することは、ホテルやレストラン、アパートメントの需要を支え、地域経済を活性化させる戦略的決断だったのです。

また、カーボベルデは気候が温暖で、年間を通して20〜30度程度の過ごしやすい天候が続きます。ヨーロッパの冬の時期にも温暖な気候が維持されるため、北半球の寒い季節を避けたいリモートワーカーにとって魅力的な選択肢となっています。さらに同国は時差の面でも優位性があり、グリニッジ標準時(GMT)-1とヨーロッパやアフリカとほぼ同じ時間帯、そして北米東海岸とも比較的近い時差で仕事ができる点も、デジタルノマドビザ導入の好条件となりました。

カーボベルデのデジタルノマドビザの概要と特徴

カーボベルデのデジタルノマドビザの概要と特徴

カーボベルデのデジタルノマドビザは正式には「Remote Working Program」と呼ばれ、外国人のリモートワーカーが最長6ヶ月間、カーボベルデに滞在しながら仕事を続けることを可能にする制度です。このビザの最大の特徴は、取得のしやすさと柔軟性にあります。申請者は自国から事前にオンラインで申請でき、必要書類の提出と審査を経て、比較的短期間でビザを取得できます。また、初回の6ヶ月間の滞在後、条件を満たせば延長も可能です。

申請に必要な主な要件としては、まず安定した収入源を持つリモートワーカーであることが挙げられます。具体的には、月収約1,500ユーロ(約24万円)以上の証明が必要となります。この金額はカーボベルデの生活水準を考慮したもので、滞在中に経済的自立ができることを示す目安となっています。次に有効なパスポート、健康保険の証明、犯罪歴がないことを証明する書類などが必要です。さらに、カーボベルデでの滞在先の証明も求められますが、これはホテルの予約確認書や賃貸契約書などで対応可能です。

申請手続きはオンラインで完結することが多く、カーボベルデ政府の公式ウェブサイトから必要書類をアップロードし、審査を受けます。申請料は約75ユーロ(約12,000円)程度と比較的リーズナブルに設定されています。審査期間は通常2週間から1ヶ月程度で、承認されれば電子ビザが発行されます。このビザを持って入国し、現地での手続きを経て滞在許可が正式に発行される流れとなります。

他国のデジタルノマドビザと比較した場合のカーボベルデの特徴としては、まず所得要件が比較的低めに設定されている点が挙げられます。例えばバルバドスやドバイなど他の人気デジタルノマド先では月収2,000〜5,000ドル(約30万〜75万円)程度の証明が必要なケースが多いのに対し、カーボベルデは若手のデジタルノマドでも手が届きやすい水準となっています。また、申請プロセスがシンプルで、必要書類も最小限に抑えられているのも大きな魅力です。

カーボベルデでのリモートワーク環境と生活インフラ

カーボベルデでのリモートワーク環境と生活インフラ

デジタルノマドにとって最も重要な要素の一つがインターネット環境です。カーボベルデは島国ながらも、主要な島ではブロードバンドインターネットが整備されています。特に首都プライアがあるサンティアゴ島や、観光の中心地サルやミンデロがあるサルやミンデロ島では、比較的安定した接続が可能です。モバイルインターネットも普及しており、現地のSIMカードを購入すれば、4G回線を使用できる地域も増えています。平均的なインターネット速度は都市部で15〜30Mbps程度で、ビデオ会議やクラウドサービスの利用には十分な環境が整っています。

コワーキングスペースは特に観光地を中心に増加傾向にあります。サンタマリアやミンデロには複数のコワーキングスペースがあり、安定したWi-Fi、会議室、カフェスペースなどを備えています。料金は日単位で約10ユーロ(約1,600円)から、月額100ユーロ(約16,000円)程度と比較的リーズナブルです。また、デジタルノマド向けの長期滞在施設も増加しており、作業スペースを備えたアパートメントやゲストハウスも選択肢として広がっています。

生活インフラについては、電力供給は概ね安定していますが、離島や一部地域では停電が発生することもあります。水道水は飲用に適さない地域が多いため、ミネラルウォーターの購入が一般的です。医療施設は主要な島には整備されていますが、専門的な治療が必要な場合は設備の整った病院が限られるため、充実した海外旅行保険への加入が推奨されています。買い物については、都市部にはスーパーマーケットやショッピングセンターがあり、基本的な生活用品は入手可能です。ただし、一部の輸入品は本国より高額になることがあります。

交通手段としては、島内では「アルゲイロ」と呼ばれる乗り合いタクシーや通常のタクシーが主な移動手段となります。島間の移動には飛行機やフェリーがありますが、天候により運休することもあるため、スケジュールに余裕を持った計画が必要です。カーボベルデ全体の治安は比較的良好で、観光客やデジタルノマドを対象とした犯罪は少ないとされています。ただし、一般的な海外旅行と同様に、貴重品の管理には注意が必要です。

デジタルノマドビザがカーボベルデにもたらす経済効果と将来展望

デジタルノマドビザがカーボベルデにもたらす経済効果と将来展望

カーボベルデ政府が発表したデータによると、デジタルノマドビザ導入後の初年度だけで約500人のリモートワーカーが同制度を利用してカーボベルデに滞在しました。これらのデジタルノマドの平均滞在期間は約3ヶ月で、一人当たりの月間支出は約2,000ユーロ(約32万円)と推定されています。単純計算すると、年間約300万ユーロ(約4億8000万円)の直接的な経済効果が生まれたことになります。この金額は小国カーボベルデにとって無視できない規模です。

また、デジタルノマドの滞在は季節による観光客の変動を平準化する効果も生んでいます。伝統的な観光のオフシーズンにも、長期滞在者としてのデジタルノマドが宿泊施設やレストランを利用することで、年間を通じた安定した収入源が生まれています。特に、パンデミック後の観光業回復期において、この効果は重要な役割を果たしました。

さらに、デジタルノマドの存在は地域経済の多様化にも貢献しています。彼らのニーズに応えるために、コワーキングスペース、長期滞在向けのアパートメント、カフェなど新たなビジネスが生まれています。また、デジタルスキルを持つ人材が国内に滞在することで、地元の若者がグローバルなデジタル経済への参加方法を学ぶ機会も増えています。実際に、一部のデジタルノマドはカーボベルデの若者向けにプログラミングやデジタルマーケティングのワークショップを開催するなど、知識の共有も行われています。

今後の展望としては、カーボベルデ政府はデジタルノマドビザをさらに発展させる計画を持っています。特に、より長期の滞在を可能にする制度の拡充や、デジタルノマドとして滞在した後にカーボベルデでビジネスを立ち上げるための支援制度なども検討されています。また、デジタルインフラの改善も継続的な課題となっており、高速インターネットの整備や安定した電力供給のための投資も計画されています。これらの取り組みを通じて、カーボベルデはアフリカにおけるデジタルノマドのハブとしての地位を確立しようとしています。

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