デジタルノマドビザ「DE Rantau」とは

マレーシアが2022年10月に導入したデジタルノマドビザ「DE Rantau」は、リモートワーカーやデジタルプロフェッショナルに長期滞在の機会を提供するプログラムです。このビザは、マレーシアデジタルエコノミー公社(MDEC)が主導し、海外からの優秀な人材誘致と国内デジタル産業の活性化を目的としています。DE Rantauビザの最大の特徴は、最長12ヶ月の滞在が許可され、さらに最大12ヶ月の延長が可能な点です。この期間中、ビザ保持者はマレーシア国内を自由に移動でき、ペナン、ジョホールバル、クアラルンプールなど様々な都市での生活を体験できます。
DE Rantauの対象者は主に二つのカテゴリーに分けられます。一つ目は海外企業と雇用契約を結んでいるリモートワーカー、二つ目はフリーランスや個人事業主として活動するデジタルプロフェッショナルです。このビザの大きな利点は、マレーシア国外で得た収入に対してマレーシアでの課税が免除される点にあります。これにより、国際的に活動するリモートワーカーは税務面でのメリットを享受できます。
このプログラムが注目される理由の一つに、マレーシアの生活環境の良さがあります。東南アジアの中でも比較的安定した治安、充実した医療施設、多文化共生社会としての多様性、そして合理的な生活コストは、長期滞在を考えるデジタルノマドにとって大きな魅力となっています。また、公用語はマレー語ですが、ビジネスシーンでは英語が広く使用されており、言語の壁が低いことも特筆すべき点です。
申請資格と必要条件

DE Rantauビザを申請するには、いくつかの重要な条件を満たす必要があります。まず年間収入の要件として、申請者は最低年間24,000米ドル(約350万円)の収入証明が求められます。この収入は、海外企業との雇用契約書や過去3ヶ月分の給与明細、フリーランスの場合は契約書や請求書などで証明します。収入証明は申請の重要な部分であり、安定した経済基盤を持つ人材を選別する基準となっています。
申請者は有効なパスポートを所持している必要があり、パスポートの残存期間は申請時点で18ヶ月以上あることが条件です。また、包括的な医療保険への加入も必須要件となっています。マレーシア滞在中の不測の事態に備え、入院費や治療費をカバーする保険に加入しておくことが求められます。デジタル関連の職種に従事していることを証明するため、雇用主からの証明書や契約書、または事業内容を示す書類の提出も必要です。
DE Rantauプログラムでは、申請者の家族(配偶者と18歳未満の子供)も同伴者として申請が可能です。ただし、同伴者一人につき追加の審査と費用が発生します。家族を同伴する場合は、家族関係を証明する書類(結婚証明書や出生証明書など)の提出が必要となります。また、申請者と同伴者全員の犯罪歴証明書の提出も求められることがあります。
さらに、申請時には220米ドルの申請料と500米ドルのビザ発行料が必要です。これらの費用は返金されないため、申請前に資格要件を慎重に確認することが重要です。マレーシア政府は、DE Rantauプログラムの質を保つため、これらの条件を厳格に審査しており、要件を満たさない場合は申請が却下される可能性があります。
申請手続きのステップバイステップ

DE Rantauビザの申請プロセスは、オンラインで完結するように設計されています。まず公式ウェブサイト(de.rantau.mdec.my)にアクセスし、個人アカウントを作成します。基本情報の入力後、メールアドレス認証を行い、アカウントが有効化されます。登録が完了したら、ダッシュボードから「Apply Now」を選択し、申請フォームに必要事項を入力していきます。個人情報、職業情報、収入情報など、各セクションを順に完成させていきます。
申請には様々な書類のアップロードが必要です。パスポートのスキャン(個人情報ページ)、顔写真(パスポート用規格)、収入証明書類(雇用契約書や給与明細)、職業証明(雇用主からの証明書や事業内容説明書)、健康保険証書のコピー、そして犯罪経歴証明書などが主な必要書類です。家族を同伴する場合は、家族それぞれのパスポートコピーと、関係を証明する書類(結婚証明書や出生証明書)も提出します。
全ての情報入力と書類アップロードが完了したら、申請料220米ドルをオンラインで支払います。支払い完了後、申請は審査プロセスに進みます。審査期間は通常2〜4週間ですが、状況により変動することがあります。審査中は随時メールで状況が通知され、追加書類の提出が求められることもあります。このような要請があった場合は、速やかに対応することが審査をスムーズに進めるコツです。
申請が承認されると、承認通知と共にビザ発行料500米ドルの支払い指示が届きます。この支払いを完了すると、デジタルビザ承認レター(eVAL)が発行されます。このレターを携えてマレーシアに入国し、入国後30日以内にイミグレーションオフィスでビザの手続きを完了させます。ここではパスポートにビザスタンプが押され、マレーシア滞在が正式に許可されます。この最終手続きは必須であり、怠ると不法滞在となる可能性があるため注意が必要です。
申請時の注意点と成功のポイント

DE Rantauビザ申請を成功させるためには、いくつかの重要なポイントに注意する必要があります。まず書類の準備と提出に関して、全ての書類は英語またはマレー語である必要があり、他言語の場合は公式な翻訳が必要です。また、収入証明は特に重要視される部分であり、安定した収入源を明確に示せる書類を用意しましょう。フリーランスの場合は、複数のクライアントとの契約書や過去の収入履歴など、収入の安定性を証明できる資料が重要となります。
申請フォームの記入ミスや情報の不一致は審査の遅延や却下の原因となります。特にパスポート情報や個人データは正確に入力し、提出前に再確認することが重要です。また、提出する写真は背景が白で、最近6ヶ月以内に撮影されたものを使用してください。医療保険に関しては、マレーシア滞在中のあらゆる医療費をカバーする包括的なプランを選ぶことが望ましいです。保険の詳細が審査の対象となるため、カバー範囲と期間が明記された保険証書を提出します。
申請後のコミュニケーションも成功の鍵となります。MDECからの連絡は主にメールで行われるため、登録したメールアドレスを定期的にチェックし、迅速に対応することが重要です。追加書類や情報の要請があった場合は、できるだけ早く対応しましょう。また、申請の進捗状況は公式ポータルサイトでも確認できるため、定期的にログインして状況を把握することをお勧めします。
最後に、マレーシア入国後の手続きも忘れずに行いましょう。承認レター(eVAL)を取得後、指定された期間内(通常は3ヶ月以内)にマレーシアに入国する必要があります。入国後30日以内にイミグレーションオフィスでの手続きが必須となり、この手続きを怠ると滞在資格が無効となる可能性があります。事前に必要書類(パスポート原本、eVAL、写真、健康保険証書など)を準備し、指定日時に遅れないよう注意しましょう。これらのポイントに注意することで、DE Rantauビザの申請プロセスをスムーズに進めることができます。