台湾と日本を繋ぐリモートワーク
台湾のデジタルノマドビザ（就業金卡）は、海外の雇用主や顧客から収入を得ることを前提としているため、日本企業や日本のクライアントとの仕事を継続しながら台湾に滞在するという働き方が可能です。時差はわずか1時間（台湾が1時間遅れ）であり、ほぼリアルタイムでのコミュニケーションが可能で、日本の業務時間中でもオンライン会議やチャットでの即時対応がストレスなく行えます。
リモートワークを効率的に行うためのツール選びも重要です。通常のビデオ会議ツール（Zoom、Google Meet、Microsoft Teamsなど）に加え、日本ではSlackやChatworkが一般的ですが、台湾ではLINE WORKSも広く使われています。プロジェクト管理ツールとしては、Asana、Trello、Notionなどがクロスボーダーでの協働に適しています。特に日本語入力環境の維持は重要なポイントで、自分のノートパソコンを持参するか、クラウドベースのソリューションを活用するとよいでしょう。
台湾と日本の間には多くのビジネスチャンスが存在します。歴史的・文化的つながりから、両国間のビジネス交流は活発であり、両国の言語や文化、ビジネス習慣に精通した人材へのニーズは常に高いです。台湾に滞在しながら、日本企業の台湾市場進出支援、日台間のビジネスマッチング、翻訳・通訳サービス、市場調査レポート作成など、両国を橋渡しするサービスを提供することで、収入源を多様化する可能性があります。
税金と社会保険の問題も重要な検討事項です。台湾に183日以上滞在する場合、台湾での税務上の居住者となり、全世界所得に対して台湾で課税される可能性があります。ただし、日本と台湾の間には租税協定に準ずる取り決めがあり、二重課税を避けるための仕組みが整備されています。台湾では6ヶ月以上の滞在者は全民健康保険に加入でき、比較的低コストで質の高い医療サービスを受けることができます。
台湾スタートアップエコシステムへの参加
台湾のスタートアップシーンは近年急速に発展し、アジアにおける重要なテクノロジーハブの一つとなっています。台湾政府は「アジアのシリコンバレー計画」を推進しており、スタートアップ育成に積極的な政策を展開しています。特に半導体、ハードウェア製造、IoT、AI、バイオテクノロジーなどの分野が強みです。デジタルノマドビザ保持者として台湾に滞在する間、このエコシステムに参加し知見やネットワークを構築することは、将来のキャリア発展に大きな価値をもたらします。
台湾のスタートアップエコシステムに参加する方法として、定期的に開催されるスタートアップイベントやミートアップへの参加が効果的です。「Meet Taipei」は台湾最大のスタートアップフェスティバルで、毎年11月頃に開催されています。また、「Taiwan Tech Arena」「Startup Stadium」「AppWorks Demo Day」などのイベントも重要です。これらのイベントは英語でも参加可能で、台湾のスタートアップコミュニティと接点を持つ良い機会となります。
台湾のスタートアップエコシステムには様々なプレイヤーが存在します。「AppWorks」はアジア有数のアクセラレーターであり、半年ごとにスタートアップを募集しています。「Taiwan Startup Stadium」はグローバル展開を目指す台湾のスタートアップを支援するプラットフォームです。台湾のスタートアップエコシステムの特徴として、ハードウェアとソフトウェアの融合があります。世界的な製造業のハブとしての歴史を持つ台湾は、特にハードウェアスタートアップに強みがあり、日本市場に興味を持つ台湾スタートアップも多く、日本語スキルと日本市場の知識を持つ人材は貴重な存在です。
台湾でのネットワーキングと人脈構築
台湾での長期的なキャリア構築において、人脈形成は極めて重要です。台湾社会は人間関係を重視する文化があり、ビジネスの機会もしばしば個人的なつながりから生まれます。まず取り組むべきは、外国人専門のコミュニティへの参加です。「Internations Taipei」「Taipei Language Exchange」「Digital Nomads Taiwan」などのグループでは、定期的に交流イベントが開催されており、同じような境遇にある人々と出会い、情報交換する良い機会となります。
業界別のネットワーキングイベントも効果的です。テック業界では「MOPCON」「COSCUP」などの国際的なカンファレンスが定期的に開催されています。デザイン分野では「設計週（Design Week）」、マーケティング分野では「DigiAsia」などがあります。コワーキングスペースも重要なネットワーキングの場で、台北市内には「The Hive」「FutureWard」「CLBC」などの国際的なスペースがあり、様々な国籍や職種の人々が集まっています。
言語面でのコミュニケーションについては、台湾ではビジネスシーンで英語が比較的通用しますが、中国語（マンダリン）の基本的なスキルがあると、よりスムーズな交流が可能になります。「語言交換（Language Exchange）」のプログラムを活用して、日本語を教える代わりに中国語を学ぶというアプローチも効果的です。台湾では「關係（グアンシー）」と呼ばれる人間関係が重視され、信頼関係を構築するためには、食事を共にすることも重要な要素です。
将来的なビザの切り替えと長期滞在のプラン
デジタルノマドビザ（就業金卡）は最長3年間の滞在が可能ですが、その後も台湾での生活を継続したい場合は、他の長期滞在オプションを検討する必要があります。まず考えられるのは、就業金卡の更新です。現行の制度では、3年の有効期限が切れる前に更新申請が可能で、元の申請と同様の条件（収入要件など）を満たしていることを証明する必要があります。
別の選択肢として、台湾での起業があります。外国人が台湾で会社を設立する場合、投資家ビザの取得が可能で、最低600万台湾元（約2,700万円）の投資と、台湾人従業員の雇用が条件となります。特定の産業では投資額の要件が緩和される場合もあり、台湾と日本をつなぐビジネス（越境EC、インバウンド観光、教育サービスなど）は有望な分野です。台湾企業への就職を通じた就労ビザの取得も選択肢の一つで、日本語能力と専門スキルを組み合わせた人材は需要があります。
長期的な視点では、永住権の取得も視野に入れることができます。台湾の永住権（APRC）を取得するには、通常5年以上の連続した滞在と、安定した収入源があることが条件となりますが、就業金卡保持者の場合、3年間の滞在後に申請が可能となる特別な優遇措置が適用されます。永住権を取得すれば、就労制限がなくなり、台湾内でのビジネス活動の自由度が大幅に高まります。いずれの選択肢を選ぶにせよ、デジタルノマドビザの期間を「台湾での長期キャリア構築のための準備期間」と位置づけ、言語スキルの向上、専門知識の深化、人脈形成、市場理解など、次のステップのための基盤づくりを計画的に進めることが重要です。
