バハマの生活コストと予算計画

バハマでのデジタルノマド生活を始めるにあたり、現実的な予算計画を立てることは不可欠だ。バハマは美しい自然環境と優れた生活水準を誇る一方で、カリブ地域の中でも比較的生活コストが高い国として知られている。これは多くの物資を輸入に依存していることが主な理由だ。首都ナッソーやパラダイス島など観光地として人気のエリアでは特に物価が高い傾向にある。一方、アウトアイランドと呼ばれる離島では、若干費用を抑えられる可能性がある。
住居費は生活コストの中で最も大きな割合を占める。ナッソーやパラダイス島の中心部では、1ベッドルームのアパートメントで月1,500〜2,500米ドル、2ベッドルームになると2,000〜3,500米ドル程度が相場だ。高級コンドミニアムやオーシャンビューの物件ではさらに高額になる。アウトアイランドでは若干安くなるが、それでも欧米の平均的な都市と比較すると高めの設定だ。長期滞在者向けには、6か月以上の契約で割引が適用されることもある。また、光熱費(電気・水道・ガス)は月150〜300米ドル程度が目安で、特に夏場はエアコンの使用で電気代が高くなることを考慮すべきだ。
食費も重要な支出項目だ。レストランでの食事は比較的高額で、カジュアルなレストランでも一人当たり20〜30米ドル、高級レストランでは一人当たり50〜100米ドル以上かかることも珍しくない。自炊をする場合でも、スーパーマーケットでの食料品価格は欧米諸国と比べて1.5〜2倍ほど高い。これは多くの食料品が輸入されているためだ。地元の市場やファーマーズマーケットを利用すると、新鮮な地元産の果物や野菜、魚介類を比較的リーズナブルな価格で購入できる場合もある。月の食費は、外食頻度にもよるが、一人当たり500〜800米ドルが目安となる。
交通費は滞在スタイルによって大きく異なる。公共交通機関は限られており、主にジトニーと呼ばれるミニバスが運行しているが、路線や運行時間が限られている。多くのデジタルノマドは、移動の自由度を高めるためにレンタカーを利用するか、車を購入することを選択する。レンタカーは日額50〜100米ドル程度、中古車の購入は5,000〜10,000米ドルからが相場だ。また、島間の移動にはフェリーや国内線の飛行機を利用することになり、片道50〜200米ドル程度の費用がかかる。その他の生活費としては、携帯電話とインターネット回線で月100〜150米ドル、エンターテイメントや余暇活動で月200〜400米ドル程度を見込んでおくとよいだろう。
各島の特徴と選ぶべき滞在先

バハマは700以上の島と2,400の小島からなる群島国家だが、デジタルノマドとして滞在するなら、いくつかの主要な島が候補となる。それぞれの島には独自の魅力と特徴があり、自分のライフスタイルや優先事項に合わせて選ぶことが重要だ。まず、ニュープロビデンス島は首都ナッソーがあり、バハマの人口の約70%が集中している。都市的な生活環境を求める人や、充実したインフラやサービスへのアクセスを重視する人に適している。国際空港があり、世界各地への接続も良好だ。ダウンタウンやケーブルビーチエリアには多くのレストラン、ショッピングセンター、エンターテイメント施設が集まっている。また、コワーキングスペースも複数あり、デジタルノマドのコミュニティも形成されつつある。
グランドバハマ島はバハマで2番目に開発が進んだ島で、フリーポートという主要都市がある。ニュープロビデンス島よりも物価が若干安く、より落ち着いた環境を求める人に適している。国立公園やビーチが多く、自然愛好家には魅力的な選択肢だ。ルカヤ国立公園では、世界最長の水中洞窟系を探検することもできる。国際空港があり、米国フロリダ州とのフェリー接続もあるため、アクセスは比較的容易だ。アバコ諸島は、セーリングやボート愛好家のパラダイスとして知られ、美しいビーチと色とりどりの植民地様式の町並みが魅力だ。マーシュハーバーやホープタウンなどの小さな町には、チャーミングなゲストハウスや長期滞在用のコテージがある。2019年のハリケーン・ドリアンによる被害からの復興が進んでおり、インフラの再建も行われている。
エレウテラ島は細長い島で、ピンクサンドビーチで有名なハーバー島を含む。アーティストやサーファーに人気があり、よりボヘミアンな雰囲気を持つ。島の北部、中央部、南部で異なる特徴があり、北部のスペイン・ウェルズは歴史的な町並みが魅力、中央部のガバナーズハーバーはサーフィンスポットとして知られている。この島は比較的静かで、観光客も少なめなため、静かな環境で集中して仕事をしたい人に向いている。一方、エグズーマ諸島は365の小島からなり、ヨットクルーズの人気スポットだ。グレートエグズーマ島には小さな町と国際空港があり、長期滞在の拠点として選ぶ人もいる。透明度の高い海と白い砂浜、野生のイグアナや豚と泳げるスポットなど、独特の体験ができる。
滞在先を選ぶ際のポイントとして、まずインターネット接続の品質が挙げられる。デジタルノマドにとって、安定したインターネット環境は必須条件だ。ニュープロビデンス島とグランドバハマ島では比較的高速な接続が期待できるが、他の島ではサービスが限られる場合がある。次に、医療施設へのアクセスも重要だ。主要な病院はナッソーとフリーポートにあり、他の島では基本的な診療所しかないことが多い。また、長期滞在の場合は、日用品や食料品の入手のしやすさも考慮すべきだ。ナッソーには大型スーパーマーケットがあるが、小さな島では選択肢が限られる。さらに、コミュニティとの交流機会や、余暇活動の選択肢も滞在生活の質に影響する。自分の興味や活動に合った環境を選ぶことが、充実したデジタルノマド生活につながるだろう。
インターネットとコワーキングスペースの状況

バハマでのデジタルノマド生活において、安定したインターネット接続は最も重要な要素の一つだ。バハマのインターネットインフラは、主要な島と観光地を中心に整備されている。ニュープロビデンス島(ナッソー)とグランドバハマ島(フリーポート)では比較的高速な光ファイバー接続が利用可能で、最大速度は100Mbps以上に達することもある。一方、アウトアイランドと呼ばれる離島では、接続速度が遅く、安定性に欠ける場合がある。バハマの主要な通信プロバイダーはBahamas Telecommunications Company(BTC)とAliv(Cable Bahamas Ltd.の子会社)の2社だ。
自宅やアパートメントでのインターネット接続は、月額60〜120米ドル程度で契約できる。速度とデータ容量に応じて料金プランが設定されており、無制限プランを選ぶと高額になる傾向がある。契約には通常、現地の住所証明と身分証明書が必要となる。長期滞在者向けのアパートメントやコンドミニアムでは、インターネット接続が家賃に含まれていることも多い。契約前に、実際の接続速度やサービスの安定性について、家主や現地のデジタルノマドコミュニティから情報を得ることをおすすめする。また、バックアップとして、ポータブルWi-Fiルーターや大容量のモバイルデータプランも検討すると良いだろう。
モバイルインターネットについては、BTCとAlivの両社がプリペイドSIMカードを提供している。観光客でも購入可能で、パスポートを提示するだけで取得できる。データプランは日単位、週単位、月単位で選べ、10GBのデータで約50米ドル程度が相場だ。4G LTE網は主要な島と観光地をカバーしているが、離島では3G接続やエッジ接続しか利用できない場所もある。移動が多い場合や、自宅のインターネットのバックアップとして、モバイルインターネットの契約も検討すべきだ。5G網の導入も計画されているが、本格的な展開はまだ先の見通しだ。
バハマのコワーキングスペースは、ナッソーを中心に徐々に増えている。「ワークス・バハマ」(The Worqs Bahamas)はナッソーダウンタウンにある人気のコワーキングスペースで、高速インターネット、会議室、プライベートオフィス、イベントスペースなどを提供している。月額会員費は約200〜400米ドルで、ドロップイン利用も可能だ。「スターターハブ」(Starter Hub)もナッソーにあるコワーキングスペースで、起業家やリモートワーカー向けのコミュニティを形成している。他にも、「アンコモンスペース」(Uncommon Space)や「イノベーションハブ」(Innovation Hub)などがある。グランドバハマ島のフリーポートには「ペリカンベイホテルコワーキング」(Pelican Bay Hotel Coworking)があり、ホテル内の快適な環境で仕事ができる。アウトアイランドでは専用のコワーキングスペースは少ないが、Wi-Fiを提供するカフェやレストラン、ホテルのロビーなどが代替として利用できる。
現地での交通手段と島間移動の方法

バハマでの移動手段は、滞在する島や生活スタイルによって異なる。まず、ニュープロビデンス島(ナッソー)での市内交通手段としては、ジトニー(Jitney)と呼ばれる小型バスが主要な公共交通機関として運行している。料金は1.25〜2.50米ドルと手頃だが、決まったスケジュールがなく、路線も限られている。主に朝7時から夜7時頃まで運行しており、週末は本数が減少する。観光客よりも地元の人々が利用することが多い交通手段だ。タクシーも広く利用されているが、メーター制ではなく、距離に基づいた固定料金が設定されている。空港からナッソー市内までは約25〜35米ドル、市内の短距離移動でも10〜15米ドルほどかかる。タクシーは観光地やホテル、空港などで簡単に見つけられるが、電話で予約することもできる。
レンタカーは、特に長期滞在者にとって便利な選択肢だ。国際運転免許証があれば、バハマで車を運転することができる。レンタカー料金は車種によって異なるが、エコノミークラスで日額50〜70米ドル、週間レンタルで300〜400米ドル程度が相場だ。保険料や税金が追加されることもあるので、契約前に確認が必要だ。バハマでは左側通行であり、右ハンドル車が一般的なことに注意が必要だ。また、ガソリン価格は日本や欧米諸国より高く、1ガロン(約3.8リットル)あたり5〜6米ドル程度だ。長期滞在者の中には、中古車を購入する人もいる。中古車市場では、5,000〜15,000米ドル程度で実用的な車を見つけることができる。
島間の移動には、国内線の飛行機、フェリー、チャーターボートなどが利用できる。バハマエア(Bahamasair)は国営の航空会社で、ナッソーから主要な島々への定期便を運航している。その他にも、ウェスタンエア(Western Air)、パイナップルエア(Pineapple Air)、サザンエア(Southern Air)などの地域航空会社がある。フライト時間は島によって異なるが、30分〜1時間程度で、片道料金は80〜200米ドル程度だ。予約は各航空会社のウェブサイトや現地の旅行代理店で行うことができる。小型飛行機を利用するため、荷物制限が厳しい場合があるので注意が必要だ。
フェリーサービスとしては、バハマズフェリーサービス(Bahamas Ferries)が主要な運航会社で、ナッソーからエレウテラ島、エグズーマ諸島、アンドロス島などへの定期便を運航している。フェリーでの移動は飛行機より時間がかかるが、料金は比較的リーズナブルで、片道40〜75米ドル程度だ。また、フロリダ州マイアミやフォートローダーデールからグランドバハマ島のフリーポートへのフェリーも運航されており、バハマ入国の選択肢の一つとなっている。これらの国際フェリーは片道約80〜150米ドルで、所要時間は2〜4時間だ。さらに、プライベートチャーターボートやヨットも、特に近隣の島への移動や、通常のフェリールートでカバーされていない島への訪問に利用できる。料金は距離や船のタイプによって異なるが、一般的に割高だ。