イギリスの医療制度は、国民保健サービス(NHS)を中心とした公的医療制度が特徴です。日本の国民健康保険とは大きく異なる点も多く、移住前の十分な理解と準備が必要です。ここでは、イギリスでの医療費の仕組みと、日本人移住者が知っておくべき重要なポイントについて解説します。
NHSの基本的な仕組みと利用方法
イギリスのNHSは、原則として医療費が無料となる税金ベースの医療制度です。しかし、この制度を利用するためには、まず居住地域のGP(一般開業医)に登録する必要があります。GPは日本でいうかかりつけ医に相当し、あらゆる診療の窓口となります。専門医の診察が必要な場合は、GPの紹介を通じて予約を取ることになります。ただし、救急医療は紹介なしで直接病院を受診することができます。2024年現在、ビザ申請時にはIHS(医療付加料)の支払いが必要で、この金額は滞在期間によって異なります。
実際にかかる医療費と自己負担
NHSでの診察や入院費用は基本的に無料ですが、一部の医療サービスには費用が発生します。例えば、処方箋医薬品には定額の処方料(イングランドでは1品目あたり約12ポンド)がかかります。また、歯科治療は一部自己負担があり、治療内容によって3段階の料金体系が設定されています。眼科検査や眼鏡、コンタクトレンズなども自己負担となります。妊娠・出産関連の医療サービスは、通常のNHS登録があれば基本的に無料で受けることができます。ただし、民間医療機関での出産を選択した場合は、相応の費用が必要となります。
民間医療保険の役割と必要性
NHSは充実した医療サービスを提供していますが、専門医の診察までの待機時間が長いことが課題として挙げられます。そのため、多くの在英日本人は補完的に民間医療保険に加入しています。民間医療保険を利用すれば、待機時間を大幅に短縮できるほか、専門医に直接かかることも可能です。また、個室での入院や、より幅広い治療オプションを選択することができます。保険料は年齢や補償内容によって異なりますが、家族での加入や企業を通じた団体加入プランなども用意されています。
渡英前の準備と到着後の手続き
イギリスでの医療サービスを円滑に利用するためには、いくつかの準備が必要です。まず、渡英前に既往歴や現在服用中の薬の英語での説明書を用意しておくことをお勧めします。また、日本での診療記録や予防接種歴の英訳も役立つ場合があります。到着後は、できるだけ早くGPへの登録を済ませましょう。登録には、パスポートや在留資格を証明する書類、居住地の証明(賃貸契約書など)が必要です。また、救急時の対応や近隣の薬局についても、事前に確認しておくことで安心です。医療用語の基本的な英語表現を学んでおくことも、スムーズなコミュニケーションのために有効です。