住居選びと契約のポイント
マレーシアでの住居探しは、移住初期段階で最も重要な決断の一つです。クアラルンプールを中心に、ペナン、ジョホールバルなどの主要都市には多様な住居オプションがあります。一般的に人気があるのはコンドミニアム（マンション）で、セキュリティ、プール、ジム、駐車場などの施設が整っています。特にデジタルノマドにとって重要な高速インターネット環境が整備されている物件が多いのも特徴です。家賃相場は地域や物件のグレードによって大きく異なりますが、クアラルンプール中心部の2ベッドルームのコンドミニアムで月額1,500〜3,000リンギット（約45,000〜90,000円）程度が目安となります。
住居契約の際には、いくつか注意すべき点があります。まず契約期間は通常1年以上が一般的ですが、デジタルノマドビザの期間に合わせた契約交渉も可能です。契約時には通常、デポジット（保証金）として家賃2ヶ月分と光熱費デポジット0.5〜1ヶ月分が必要です。契約書には、家賃支払い条件、修繕責任の所在、解約条件などを明確に記載してもらい、署名前に内容を十分理解することが重要です。特に早期解約時のペナルティ条項については注意が必要です。
住居を探す方法としては、不動産ポータルサイト（PropertyGuru、iProperty等）の利用が一般的です。現地の不動産エージェントを利用するのも効率的ですが、エージェントフィーが発生する場合があります。短期滞在から始めたい場合は、Airbnbなどの短期レンタルサービスを利用し、実際に現地で物件を見てから長期契約を結ぶという方法も賢明です。また、多くのコンドミニアムでは家具付き物件が一般的ですが、家具なしの物件を選ぶ場合は、家具購入予算を考慮する必要があります。
銀行口座開設と現地での金融管理
マレーシアでの長期滞在には、現地銀行口座の開設が実用的です。銀行口座があれば、家賃支払い、光熱費の自動引き落とし、現地での買い物が便利になります。マレーシアの主要銀行には、Maybank、CIMB Bank、Public Bank、Hong Leong Bankなどがあり、各銀行は外国人向けのサービスも提供しています。デジタルノマドビザ保持者は、ビザの承認レターと滞在許可証（パスポートのスタンプ）があれば、基本的に銀行口座を開設できます。
銀行口座開設に必要な書類は、有効なパスポート、デジタルノマドビザ（滞在許可証）、住所証明書（賃貸契約書など）、そして場合によっては収入証明書です。銀行によって要件が異なるため、事前に選択した銀行の公式サイトで確認するか、直接支店に問い合わせることをお勧めします。多くの銀行では英語対応が可能ですが、主要支店や外国人の多い地域の支店を選ぶとスムーズに手続きが進みます。
マレーシアでの金融管理においては、いくつかの実用的な知識が役立ちます。まず、国際送金の手段として、銀行間送金以外にもWise（旧TransferWise）やPayoneerなどのオンライン送金サービスが便利です。これらは一般的に銀行よりも手数料が低く、為替レートも有利です。クレジットカードは主要都市の店舗やレストランで広く利用できますが、現金も常に携帯しておくと安心です。マレーシアリンギット（MYR）は比較的安定した通貨ですが、為替レートの変動に注意し、大きな支出の前には為替状況を確認することをお勧めします。
通信環境とインターネット接続の確保
デジタルノマドにとって、安定したインターネット環境は仕事の生命線です。マレーシアの通信インフラは東南アジアの中でも比較的整備されており、主要都市では高速インターネットが利用可能です。固定回線の主要プロバイダーには、Unifi（TM）、Maxis、Time、Celcomなどがあり、100Mbps〜1Gbpsのプランが一般的です。マンションやコンドミニアムの多くは、特定のプロバイダーと提携していることが多いため、入居前に利用可能なインターネットサービスを確認することが重要です。
モバイルインターネットも充実しており、Maxis、Celcom、Digi、U Mobileなどの主要キャリアがあります。プリペイドSIMは空港や各キャリアショップで購入でき、パスポートの提示のみで簡単に登録できます。月額30〜100リンギット（約900〜3,000円）程度で、十分なデータ量のプランを選ぶことができます。特にデジタルノマドの場合、固定回線の手配や開通を待つ間の代替手段として、またはバックアップとして、モバイルデータは重要です。
安定したワークスペースとしては、マレーシア各地にコワーキングスペースが増えています。クアラルンプールではBangsar、Mont Kiaraエリア、ペナンではジョージタウン周辺に多くのコワーキングスペースがあります。月額会員費は200〜500リンギット（約6,000〜15,000円）程度で、24時間アクセス、会議室利用、コミュニティイベントなどのサービスが提供されています。また、マレーシアではカフェ文化も浸透しており、Wi-Fi完備のカフェが多いため、一時的な作業場所として利用することも可能です。
医療保険と健康管理の体制
マレーシア滞在中の健康管理には、適切な医療保険の準備が不可欠です。デジタルノマドビザの申請要件にも含まれていますが、マレーシア滞在中のあらゆる医療費をカバーする包括的な保険に加入することが重要です。国際的な医療保険会社（Cigna、Allianz、AXAなど）は、マレーシアを含む海外赴任者向けの保険プランを提供しています。保険選びの際は、入院費、外来診療、緊急搬送、医療搬送などのカバー範囲と上限額を確認し、自分のニーズに合ったプランを選びましょう。
マレーシアの医療システムは公立と民間に分かれており、特に外国人は民間医療機関を利用することが一般的です。クアラルンプール、ペナン、ジョホールバルなどの主要都市には国際基準の民間病院があり、英語対応の医師やスタッフが多いため、言語の壁は比較的低いです。一般的な診察料は100〜200リンギット（約3,000〜6,000円）程度からで、専門医や詳細な検査が必要な場合は更に高額になります。保険なしで入院となると、一日あたり数千リンギットの費用が発生することもあるため、十分な保険カバーを確保することが重要です。
日常的な健康管理としては、マレーシアの気候（高温多湿）に対する適応が重要です。十分な水分摂取、適切な冷房管理、日焼け対策などが基本です。また、デング熱などの蚊媒介疾患への注意も必要で、虫除け対策を怠らないようにしましょう。食事面では、屋台料理を楽しむ際は衛生状態の良い店を選び、生水は避け、ミネラルウォーターを利用するのが安全です。処方箋なしで購入できる一般的な薬はドラッグストアで入手可能ですが、持病がある場合は、必要な薬を十分に持参するか、現地の医師からの処方を受ける準備をしておくことをお勧めします。
