マルタデジタルノマドビザの基本概要

マルタのデジタルノマドビザは、正式には「Nomad Residence Permit(ノマド居住許可証)」と呼ばれ、2021年6月頃に導入された制度です。このビザにより、リモートワーカーやフリーランサーが美しい地中海の島国マルタで最長1年間の滞在が可能になります。また、条件を満たせば更新も可能で、長期的なデジタルノマド生活を送ることができます。
マルタはEUに加盟している国であり、シェンゲン協定にも加盟しているため、マルタのデジタルノマドビザを取得することで、シェンゲン協定国内での移動も容易になります。特に注目すべき点として、ヨーロッパでは珍しく英語が公用語の国であるため、日本人にとっても言語の障壁が比較的低い点が大きな魅力となっています。
マルタは地中海に浮かぶ小さな島国で、イタリアのシチリア島の南に位置し、温暖な気候と美しい景観を誇ります。面積は東京23区の約半分、人口約51万人という小国ながら、高速インターネットと5Gネットワーク環境が整備されており、デジタルノマドにとって理想的な環境が整っています。
必要要件と取得条件

マルタのデジタルノマドビザを取得するには、いくつかの条件を満たす必要があります。まず最も重要な条件は安定した収入源を持っていることで、月収が2,700ユーロ(約35万円)以上あることが求められます。家族も一緒に申請する場合は、追加で家族1人につき賃金の20%分が上乗せされます。
申請者の就業形態としては、主に次の3パターンが対象となります: 1. マルタ国外の会社に雇用されリモートワークを行う会社員 2. マルタ国外で登記された会社の経営者、パートナーや株主 3. マルタ国外の顧客にサービスを提供するフリーランスやコンサルタント
また、滞在中の医療費をカバーする健康保険への加入が必須となっています。マルタでは無料で医療サービスを受けることはできないため、包括的な健康保険に加入していることが重要な条件です。さらに、マルタでの滞在先を証明するための賃貸契約書や宿泊証明も必要となります。
他国のデジタルノマドビザとの比較

マルタのデジタルノマドビザは、他のEU諸国のデジタルノマドビザと比較していくつかの特徴があります。まず、収入要件が月額2,700ユーロ(約35万円)と、エストニア(3,500ユーロ)やポルトガル(2,800ユーロ)などに比べて比較的低く設定されている点が挙げられます。日本のデジタルノマドビザでは年収1,000万円以上という条件があることを考えると、マルタは取得のハードルが低いと言えるでしょう。
また、税制面での優遇措置も大きな特徴です。マルタのデジタルノマドビザ保持者は、マルタ国外からの収入に対してマルタでの課税が発生しません。これは同じEU内のデジタルノマドビザでも、183日以上滞在すると現地での課税対象となる国が多い中で、非常に魅力的な条件と言えます。実質的に「非居住者」として扱われるため、源泉所得税は本国で納税することになります。
さらに、マルタは英語が公用語であるという点も、他のヨーロッパ諸国と大きく異なります。クロアチアやポルトガルなど多くの国では、現地語の習得が社会生活において必要となりますが、マルタでは日常生活からビジネスまで英語で完結することができます。また、イタリアの影響も受けているため、イタリア語を話す人も多く、文化的にも多様性があります。
申請手続きの概要と費用

マルタのデジタルノマドビザの申請は比較的シンプルで、必要書類を揃えてResidency Malta Agencyに提出します。申請料は300ユーロ(約38,500円)で、家族を追加する場合は一人につき300ユーロが追加で必要となります。これは他国のデジタルノマドビザと比較しても標準的な費用と言えるでしょう。
申請から審査結果が出るまでの期間は通常30日程度とされていますが、書類の不備などがあれば延長される可能性もあります。審査はメールでのやり取りが基本となり、必要に応じて追加書類の提出を求められることもあります。審査に通過した場合、滞在期間に応じて、短期(91日〜180日)の場合はナショナルビザが、長期(181日〜365日)の場合は滞在許可証が発行されます。
マルタのデジタルノマドビザは、リモートワークを行いながら地中海の美しい環境で生活したい日本人にとって、検討する価値のある選択肢と言えるでしょう。特に英語環境での生活や子育てを希望する方、また欧州内を拠点にビジネスを展開したい方にとって、マルタは理想的な環境を提供してくれます。申請条件も比較的緩やかで、手続きもシンプルなため、デジタルノマドライフへの第一歩として適しています。