ストレスが免疫力を低下させる科学的メカニズムと、日常生活で実践できる免疫力アップ法を紹介。百日咳や風邪の季節にアストラガルスで免疫ケアする方法も解説しています
現代社会のストレスと私たちの免疫システム

私たちの日常生活には様々なストレスが存在します。仕事や学校でのプレッシャー、人間関係の悩み、睡眠不足、そして現代社会特有の情報過多によるストレスなど、その種類は多岐にわたります。カナダの生理学者ハンス・セリエ博士はストレスを「精神緊張・心労・苦痛・寒冷・感染などごく普通に見られる刺激(ストレサー)に対する身体の非特異的な反応」と定義しました。適度なストレスは私たちの生活にメリハリを与え、能力を高めることもありますが、過度で長期間続くストレスは心身に様々な悪影響を及ぼします。
特に注目すべきは、ストレスと免疫力の深い関係です。免疫力とは、体内に侵入した細菌やウイルス、腫瘍などを排除する力のことで、私たちの健康を守る重要な防御システムです。この免疫システムを担っているのが、リンパ球、顆粒球、マクロファージなどの免疫細胞です。これらの細胞は私たちの体内で常に外敵から身を守るために活動しています。
興味深いことに、免疫システムは自律神経の支配を受けていることが科学的に証明されています。大阪大学の研究グループは2014年に、ストレスや気分などの精神的な作用が免疫に影響することを実証しました。具体的には、交感神経からの入力がリンパ球の体内動態を制御することが明らかになり、このメカニズムが炎症性疾患の病態にも関与していることが示されました。
通常、私たちの自律神経は交感神経と副交感神経のバランスが保たれることで正常に機能しています。活発な状態では交感神経が優位になり顆粒球の比率が上昇し、穏やかな状態では副交感神経が優位となりリンパ球の比率が上昇します。しかし、ストレスが過度になると、このバランスが崩れてしまい、免疫機能に悪影響を与えるのです。
ストレスが免疫力を低下させるメカニズム

ストレスが免疫力を低下させる仕組みには、いくつかの重要なメカニズムがあります。まず第一に、ストレスを感じると体内でコルチゾールと呼ばれるホルモンが分泌されます。このコルチゾールには、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の働きを抑制したり、免疫細胞間の情報伝達物質(サイトカイン)の合成を阻害したりする性質があります。そのため、ストレスが多い状態が続くと、免疫力が低下してしまうのです。
第二に、ストレスが自律神経のバランスを乱すことも大きな要因です。「悲しい」「怖い」「腹が立つ」などのストレスがかかると、交感神経が緊張し、副交感神経とのバランスが崩れます。これらの神経は白血球やリンパ球など、体を病原体から守る免疫細胞の働きに関わっているため、バランスが崩れることで免疫力が弱まるのです。
第三に、ストレスによって体の血行が悪くなることも免疫力低下につながります。ストレスを感じると血管が収縮し、血液の流れが滞ります。その結果、免疫細胞が体内を効率よく巡回できなくなり、全身の免疫監視機能が低下してしまいます。また、血行不良は体温低下にもつながり、身体が冷えることで免疫機能がさらに弱まるという悪循環に陥ることもあります。
これらのメカニズムにより、ストレスが溜まった状態が続くと、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。実際に研究でも、睡眠時間が8時間以上の人に比べて、それ以下の人は風邪をひく確率が3倍以上も高いというデータがあります。また、大学生の精神的ストレスと唾液中の免疫グロブリンA(SIgA)分泌速度の関係を調べた研究では、試験期間などの高ストレス時にSIgA分泌速度が有意に低いという結果が出ています。
現在流行している百日咳についても、ストレスによる免疫力低下が感染リスクを高める可能性があります。特に予防接種を受けていても時間の経過とともに免疫力が減衰する百日咳においては、ストレスによる免疫力の低下が追い打ちをかけ、感染のリスクをさらに高める可能性があるのです。
日常生活で実践できる免疫力アップの方法

ストレスによる免疫力低下を防ぐためには、日常生活の中でいくつかの対策を心がけることが大切です。まず何よりも重要なのは、良質な睡眠をしっかりとることです。睡眠中には免疫細胞を強化する成長ホルモンが分泌されるため、できれば7〜8時間の質の高い睡眠を確保しましょう。寝る前のスマートフォンやパソコンの使用を控え、就寝時間を一定にするといった睡眠習慣の改善も効果的です。
運動も免疫力向上に役立ちます。適度な運動は副交感神経の働きを高めてリラックス効果をもたらし、ストレス解消につながります。また、運動によって血液循環が良くなり、免疫細胞が活性化します。ただし、激しすぎる運動は逆に免疫力を低下させる可能性があるため、自分のペースで無理のない運動を心がけましょう。ウォーキングやヨガなど、軽度から中程度の運動が特におすすめです。
バランスの良い食事も免疫力維持には欠かせません。特にビタミンA、C、Eなどの抗酸化作用のある栄養素を積極的に摂ることで、ストレスによって発生する活性酸素から体を守り、免疫力低下を防ぐことができます。ビタミンCはストレスによって多く消費されるため、特に意識して摂取することが重要です。また、腸内環境を整える発酵食品や食物繊維も免疫力向上に効果的です。
入浴も自律神経のバランスを整える良い方法です。40℃前後のお湯に10分程度全身浴をすることで、浮力によるリラックス効果が得られ、自律神経のバランスが整います。特に体が冷えると血液の流れが悪くなり免疫力が弱まるため、適度な入浴で体を温めることは免疫ケアの基本と言えるでしょう。
また、笑うことも免疫力アップに役立ちます。笑うと免疫細胞であるナチュラルキラー細胞が活性化することが研究で示されています。「ワハハ」と笑えば、多くのナチュラルキラー細胞が一斉に元気になるそうです。興味深いことに、作り笑いでも免疫力が上がることが報告されていますので、気分が落ち込んでいる時でも意識的に笑顔を作ってみるのも良いかもしれません。
アストラガルスで免疫力をサポート:自然の恵みを活かす

これまでにご紹介した生活習慣の改善に加えて、免疫力をサポートする天然成分を取り入れることも効果的です。そのひとつが、「アストラガルス」と呼ばれるハーブです。アストラガルスは中国北部や内モンゴル原産のマメ科の多年草で、日本では黄耆(オウギ)と呼ばれています。2000年以上前から中国や日本の伝統医学で重要な薬草として用いられてきました。
アストラガルスの根には様々な有効成分が含まれており、特に注目されるのは免疫機能への好影響です。研究によれば、アストラガルスに含まれるフラボノイドやサポニン、多糖体などの成分が、T細胞やナチュラルキラー細胞の活動を活発にし、病原体に感染した細胞や異常細胞を排除する力を高めることが示されています。これらの効果により、風邪やインフルエンザなどの感染症に対する抵抗力を高める働きが期待できるのです。
また、アストラガルスはアダプトゲン(適応素)として知られ、ストレスに対する体の適応力を向上させる効果も持っています。ストレスや疲労から体を守り、自然治癒力を高めることで、免疫システムが正常に機能するよう支援します。特に現代社会のような慢性的なストレス環境下では、このようなアダプトゲンの力が私たちの健康維持に役立つと考えられています。
アストラガルスは中国では放射線や化学療法によるがん治療に併用されることもあり、通常の治療で低下しがちな免疫機能を支援する目的で使用されています。これは「扶正療法」と呼ばれ、正気(体の防御力)を補助し、治療による副作用を軽減しながら生活の質を向上させる効果が期待されています。
子どもや高齢者など、特に免疫力が低下しやすい人々にとって、アストラガルスのような自然由来の免疫サポート成分は特に有益かもしれません。ただし、アストラガルスには免疫力を上げる働きがあるため、自己免疫疾患の方は医師に相談してから使用することが望ましいでしょう。また、妊娠中や授乳中の方も、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
アストラガルスはサプリメントの形で摂取する方法が一般的ですが、ハーブティーや料理に加えるなど、様々な方法で日常に取り入れることができます。季節の変わり目や寒い季節に向けての準備として、または日頃のストレスによる免疫低下が気になる方は、アストラガルスを取り入れた免疫ケアを検討してみてはいかがでしょうか。
現代社会では完全にストレスを避けることは難しいかもしれませんが、その影響を最小限に抑え、免疫力を高める工夫をすることで、百日咳や風邪などの感染症から身を守ることができます。特に感染症が流行しやすい季節の変わり目には、自分自身の免疫力を意識した生活習慣を心がけ、必要に応じてアストラガルスなどの自然由来の免疫サポート成分も活用しながら、健やかな毎日を過ごしましょう。