タイと日本を繋ぐリモートワーク

タイのLTRビザ(デジタルノマドカテゴリー)は、海外の雇用主やクライアントから収入を得ることを前提としているため、日本企業や日本のクライアントとの仕事を継続しながらタイに滞在するという働き方が理想的です。時差はわずか2時間(タイが2時間遅れ)であり、業務時間の大部分が重なるため、ほぼリアルタイムでのコミュニケーションが可能です。例えば、日本の午前10時はタイの午前8時、日本の午後6時はタイの午後4時であり、オンライン会議やチャットでの即時対応もストレスなく行えます。
リモートワークを効率的に行うためには、通常のビデオ会議ツール(Zoom、Google Meet、Microsoft Teamsなど)に加え、日本企業で多く使われているSlackやChatworkの使用を継続するとよいでしょう。プロジェクト管理にはAsana、Trello、Notionが適しており、ファイル共有にはGoogle DriveやDropboxが便利です。タイでの安定したインターネット環境の確保は必須であり、自宅の固定回線に加えて、モバイルデータ通信のバックアップを用意しておくと安心です。
日本とタイの間には多くのビジネスチャンスが存在します。タイには約6,000社の日系企業が進出しており、両国間のビジネス交流は活発です。この環境を活かし、日本語とタイの文化・ビジネス環境に精通した人材として付加価値を提供することができます。具体的には、日本企業のタイ進出支援、日系企業のローカルマーケット向けマーケティングコンサルティング、越境ECサポート、タイ現地レポート作成など、両国を橋渡しするサービスが考えられます。また、日本語教師、翻訳・通訳、コンテンツ制作など、言語スキルを活かした副業も収入源多様化の選択肢となります。
タイスタートアップエコシステムへの参加

タイのスタートアップシーンは近年急速に発展し、東南アジアにおける重要なイノベーションハブの一つとなっています。タイ政府は「Thailand 4.0」イニシアチブを通じてデジタル経済の発展を推進しており、特にフィンテック、Eコマース、フードテック、アグリテック、ヘルステックなどの分野が成長しています。
タイのスタートアップエコシステムに参加する方法として、定期的に開催されるスタートアップイベントやミートアップに参加することが効果的です。「Techsauce Global Summit」はタイ最大のテクノロジーカンファレンスで、アジア全域から起業家や投資家が集まります。「Startup Thailand」は政府主催の大規模イベントで、国内外のスタートアップが一堂に会します。バンコクでは「Hubba」「SPACE」「True Digital Park」などのコワーキングスペースで、定期的にワークショップやネットワーキングイベントが開催されています。
メンターやアドバイザーとしての活動も考えられます。「500 TukTuks」「DTAC Accelerate」「True Incube」などのアクセラレータープログラムでは、特定分野の専門知識を持つメンターが求められています。日本市場の知見やグローバルなビジネス経験は、タイのスタートアップにとって貴重なリソースとなります。ビジネスアイデアを持っている場合は、タイを拠点に起業することも視野に入れられます。特に、日本とタイをつなぐビジネスモデルや、タイの発展に貢献するソリューションは歓迎される傾向があります。
タイでのネットワーキングと人脈構築

タイでの長期的なキャリア構築において、人脈形成は極めて重要です。タイのビジネス文化では、個人的な関係性が非常に重視されます。まず取り組むべきは、外国人専門のコミュニティへの参加です。「Internations Bangkok」「Bangkok Entrepreneurs」「Digital Nomads Thailand」などのグループでは、定期的に交流イベントが開催されています。業界別のネットワーキングイベントも効果的で、テック業界では「Web Wednesday」「Bangkok Startup Meetup」、デザイン分野では「CreativeMornings Bangkok」、マーケティング分野では「Bangkok Digital Marketing」などの定期的なイベントがあります。
日系コミュニティとのつながりも大切です。「在タイ日本商工会議所(JCC)」や「タイ日経済技術振興協会(TPA)」などの組織は、ビジネスセミナーやネットワーキングイベントを定期的に開催しています。コワーキングスペースも重要なネットワーキングの場で、バンコク市内には「The Hive」「WeWork」「Hubba」などの国際的な施設があり、様々な国籍や職種の人々が集まっています。
タイでは「ナム・ジャイ(思いやりの心)」と呼ばれる相互扶助の精神が重視されます。人間関係構築においては、ビジネスの話だけでなく、個人的な交流も大切です。食事を共にすることは関係構築の重要な要素であり、タイのビジネスカルチャーでも会食は重要な役割を果たしています。また、「LINE」はタイでのコミュニケーションに欠かせないツールであり、ビジネス上のやり取りにも使われます。交換した連絡先は定期的にフォローアップし、関係を維持することが重要です。
将来的なビザの切り替えと長期滞在のプラン

LTRビザ(デジタルノマドカテゴリー)は最長10年間の滞在が可能ですが、将来的にはタイでのキャリアや生活スタイルの変化に応じて、他のビザへの切り替えを検討する可能性もあります。LTRビザ自体の更新については、5年間の初期期間が終了する前に更新申請を行う必要があり、元の申請と同様の条件(収入要件など)を満たしていることを証明する必要があります。
タイでの起業を考える場合、「Smart Visa」や「Board of Investment(BOI)」のプロモーションによるビザなど、起業家向けのビザへの切り替えが選択肢となります。Smart Visaは高度技術分野の起業家、投資家、専門家を対象としたプログラムで、最長4年間の滞在が可能です。申請には認定されたインキュベーター/アクセラレーターからの推薦や、最低60万バーツの投資資金などが条件となります。
タイ企業への就職を通じた就労ビザの取得も選択肢の一つです。特に日本語能力と専門スキルを組み合わせた人材は、タイの日系企業や現地企業で需要があります。長期的な視点では、タイでの永住権取得も視野に入れることができ、就労ビザで3年以上連続してタイに滞在していることが基本条件となります。50歳以上であれば、リタイアメントビザも選択肢で、タイの銀行に80万バーツ以上の預金や、月額6.5万バーツ以上の年金収入があれば申請可能です。いずれのビザを選択するにせよ、タイでの長期滞在には文化への理解、言語スキルの向上、現地コミュニティとの良好な関係が重要です。