アメリカの医療費は世界でも突出して高額であり、適切な医療保険がない場合、一回の入院で数百万円から数千万円の請求を受ける可能性があります。日本のような国民皆保険制度がないアメリカでは、医療費の管理は生活設計における最重要事項の一つとなります。本記事では、アメリカの医療費の実態と、その対策について詳しく解説します。
アメリカの医療費の実態
アメリカの医療費の特徴は、その高額さと医療機関による価格の大きな差異です。例えば、盲腸の手術では平均で3万ドル(約400万円)以上、心臓バイパス手術では10万ドル(約1300万円)以上かかることも珍しくありません。救急車の利用だけでも1000ドル(約13万円)を超えることがあります。また、同じ処置でも病院によって料金が大きく異なり、数倍の差が生じることもあります。さらに、保険適用の有無によっても請求額は大きく変動します。基本的な検査や予防接種などの一般的な医療サービスでも、保険なしでは相当な出費となります。
医療保険の種類と選び方
アメリカでは主に雇用主を通じて医療保険に加入します。一般的な保険プランとして、HMO(Health Maintenance Organization)とPPO(Preferred Provider Organization)があります。HMOは比較的低コストですが、かかりつけ医を通じてしか専門医を受診できず、ネットワーク外の医療機関は原則利用できません。一方、PPOは保険料は高めですが、専門医に直接かかることができ、ネットワーク外の医療機関でも一定の補償があります。個人で加入する場合は、Affordable Care Act(通称オバマケア)のマーケットプレイスを通じて保険を購入することができます。65歳以上の方はMedicare(公的医療保険)に加入できますが、それまでの期間は何らかの医療保険に加入しておく必要があります。
医療費の実質的な負担と支払い方法
医療保険に加入していても、実際の医療費負担は決して小さくありません。まず、毎月の保険料に加えて、年間の自己負担限度額(デダクティブル)があり、これを超えるまでは医療費を全額支払う必要があります。デダクティブルを超えた後も、コインシュアランス(医療費の一定割合の自己負担)が発生します。また、処方薬についても独自の補償制度があり、ジェネリック医薬品とブランド薬で自己負担額が大きく異なります。緊急時の医療費支払いに備えて、HSA(Health Savings Account)という医療費専用の税制優遇口座を利用することもできます。
渡米前の準備と現地での対策
アメリカ移住を計画する際は、まず十分な医療保険の確保が必要です。渡米直後から保険が適用されるよう、事前に手続きを済ませておくことをお勧めします。また、持病がある場合は、英文の診断書や処方箋履歴を用意し、現地の医師に提示できるようにしておきましょう。緊急時に備えて、居住地域の医療機関のネットワークを確認し、かかりつけ医を決めておくことも重要です。さらに、予期せぬ医療費に備えて、緊急用の貯蓄を確保しておくことも賢明です。医療費は高額になる可能性がありますが、適切な準備と保険選択により、安心して医療サービスを受けることができます。