ポルトガルのデジタルノマドビザとは

ポルトガルのデジタルノマドビザは正式には「D8ビザ」として知られ、2022年10月に導入された比較的新しい制度です。このビザは、リモートワークが可能な職業に就いている外国人がポルトガルに長期滞在しながら働くことを可能にします。デジタルノマドやリモートワーカー、フリーランス、起業家など、場所に縛られない働き方をしている人々をターゲットにしています。
D8ビザの最大の特徴は、最初に4か月間の滞在が許可され、その後2年間の居住許可証(Residence Permit)に切り替えることができる点です。さらに、この居住許可証は条件を満たせば3年ごとに更新でき、5年後には永住権申請の資格が得られます。これにより、短期的な滞在だけでなく、長期的にポルトガルに住むための道が開かれているのです。
また、ポルトガルはEU加盟国であるため、このビザを取得すれば、シェンゲン協定加盟国内を自由に移動することができます。つまり、ポルトガルを拠点にしながら、ビザなしで他のEU諸国へ90日以内の短期旅行が可能となります。これは、ヨーロッパ全体をビジネスや観光で巡りたいデジタルノマドにとって大きな魅力です。
ポルトガルデジタルノマドビザの申請要件

D8ビザの申請には、いくつかの基本的な要件を満たす必要があります。まず、申請者は日本を含む非EU国の国籍を持ち、リモートワークが可能な職業に就いていることが条件です。具体的には、企業に雇用されているリモートワーカー、複数のクライアントを持つフリーランサー、あるいは起業家のいずれかである必要があります。
経済的要件として、安定した収入源を持っていることを証明しなければなりません。具体的には、ポルトガルの最低賃金の4倍以上(2025年現在、月額約3,040ユーロ以上)の収入があることが求められます。これは、雇用契約書、過去の所得税申告書、銀行取引明細書などで証明することができます。
また、ポルトガル滞在中の宿泊先を確保していることも必要です。これは、賃貸契約書、ホテル予約確認書、または知人宅に滞在する場合は招待状などで証明します。さらに、包括的な旅行保険または民間健康保険に加入していること、犯罪歴がないことを証明する書類も必要となります。
申請に必要な書類はすべてポルトガル語または英語である必要があり、他の言語の場合は公式な翻訳とアポスティーユ認証が求められます。これらの要件を満たした上で、在日ポルトガル大使館または領事館での面接を経て、ビザ申請を行います。
他国のデジタルノマドビザとの主な違い

ポルトガルのD8ビザは、他の国々のデジタルノマドビザと比較していくつかの特徴があります。まず、滞在可能期間の面では、多くの国のデジタルノマドビザが1年程度の滞在を許可するのに対し、ポルトガルでは最初に4ヶ月のビザを取得した後、2年間の居住許可に切り替え、さらに更新することで長期滞在が可能です。また、5年後には永住権申請の道が開かれるという点が大きな違いです。
経済的要件に関しては、ポルトガルの月収要件(約3,040ユーロ)は、スペイン(約2,000ユーロ)やクロアチア(約2,300ユーロ)と比べるとやや高めですが、ドバイ(約5,000ユーロ)やアンティグア・バーブーダ(約5,000ユーロ以上)などよりは低い水準にあります。つまり、ポルトガルは経済的要件のハードルが中程度に設定されています。
税制面では、ポルトガル独自の非常居住者税制(NHR)が大きな魅力となっています。このプログラムに登録することで、特定の海外収入に対する税金が免除されたり、一部の所得に対して10%の固定税率が適用されたりする優遇措置を最長10年間受けることができます。これは、タイやバリなどの一部のアジア諸国の税制優遇と比較しても非常に魅力的で、高所得のデジタルノマドには大きなメリットとなります。
地理的な利点として、ポルトガルはEU加盟国であるため、シェンゲン協定国内の自由移動が可能です。これに対し、バリやタイなどのアジアのデジタルノマド人気国では、他国への移動にはそれぞれ別のビザが必要となることが多いです。また、ジョージアやモンテネグロなどのヨーロッパの非EU国のデジタルノマドビザでは、EUへの入国には別途ビザが必要となる場合があります。
ポルトガルデジタルノマドビザの魅力とメリット

ポルトガルがデジタルノマドに選ばれる理由はいくつもあります。まず、気候が温暖で年間を通じて過ごしやすいことが挙げられます。特に、リスボンやポルトなどの主要都市は冬でも比較的温かく、アルガルヴェ地方では一年中マリンスポーツを楽しむことができます。また、治安の良さも大きな魅力で、世界平和指数では常に上位にランクインしています。
コストオブリビングの面では、西ヨーロッパの中では比較的リーズナブルです。特に、リスボンやポルト以外の地方都市では、住居費や食費が安く抑えられます。一方で、インターネット環境は非常に充実しており、光ファイバー網が国全体に整備されています。実際、ポルトガルは世界でも最も高速なインターネット接続を持つ国の一つとされています。
ワークスタイルの面では、国内各地にコワーキングスペースが充実しており、特にリスボンはヨーロッパでも有数のスタートアップハブとして知られています。また、英語話者が多いため、ポルトガル語を話せなくても日常生活やビジネスで困ることは少ないでしょう。
さらに、地理的にも魅力的な位置にあります。ヨーロッパの西端に位置しながらも、リスボンからはパリまで約2時間半、ロンドンまで約3時間のフライトで到着できます。また、アメリカ東海岸へのフライト時間も比較的短く、日本との時差も8時間程度と、世界各地とのリモートワークの調整がしやすい立地にあります。
生活の質という点では、世界有数の美しい海岸線、豊かな歴史と文化、美食の国としても知られており、ワークライフバランスを重視する人々に適した環境です。また、医療制度も充実しており、世界保健機関(WHO)によると、ポルトガルの医療システムは世界でもトップクラスの評価を受けています。
長期的な視点では、ポルトガルのデジタルノマドビザは永住権や市民権への道を開くものでもあります。5年間の合法的な滞在後には永住権を申請することができ、さらに条件を満たせば6年後には市民権の申請も可能です。これにより、EUのパスポートを取得できる可能性もあり、将来的な選択肢を広げることができます。