Nomad Life
ギリシャのデジタルノマドビザ：概要と必要要件
ギリシャデジタルノマドビザの基本 ギリシャは地中海の穏やかな気候と豊かな文化遺産、そして比較的手頃な生活費で近年デジタルノマドたちの注目を集めています。2021年9月に導入されたギリシャのデジタルノマドビザは、ヨーロッパ圏内で長期滞在を希望するリモートワーカーに新たな可能性を開きました。このビザはギリシャ以外の国の雇用主やクライアントのためにリモートで働く外国人向けに設計されており、最長12ヶ月間の滞在が認められています。さらに、延長申請によって最大2年までの滞在が可能です。 ギリシャのデジタルノマドビザは、正式には「デジタルノマド特別目的居住許可証」と呼ばれ、申請者はまず自国のギリシャ大使館や領事館でタイプD（長期）ビザを取得した後、ギリシャ到着後に居住許可を申請するという二段階のプロセスを踏む必要があります。この制度の魅力は、欧州連合（EU）域外からの申請者にとって、シェンゲン協定加盟国内での自由な移動が可能になる点にあります。つまり、ギリシャを拠点としながらも、他のEU諸国への短期旅行が可能となるのです。 ギリシャデジタルノマドビザの申請要件 ギリシャのデジタルノマドビザを取得するためには、いくつかの重要な要件を満たす必要があります。最も基本的な条件として、申請者はギリシャ国外の企業や組織に雇用されているか、自営業者としてギリシャ国外のクライアントに対してサービスを提供していることが求められます。つまり、収入源がギリシャ国外にあることが大前提となります。 経済的要件については、申請者は月額収入が最低3,500ユーロ（約56万円）以上であることを証明する必要があります。家族を帯同する場合は、配偶者につき追加で700ユーロ（約11万円）、子供一人につき500ユーロ（約8万円）の追加収入が求められます。この収入基準は、他の多くの国のデジタルノマドビザと比較すると高めに設定されていますが、これはギリシャ政府が一定以上の経済力を持つデジタルプロフェッショナルを対象としていることの表れでしょう。 また、健康保険の加入も必須要件となっており、ギリシャ滞在中の医療費をカバーする海外旅行保険または国際的な健康保険に加入していることを証明する必要があります。その他、犯罪歴がないことを証明する書類や、ギリシャでの滞在予定先の情報（賃貸契約書など）の提出も求められます。これらの要件は、申請者がギリシャ社会に負担をかけることなく、むしろ経済的に貢献できる人材であることを確認するためのものです。 他国のデジタルノマドビザとの比較 ギリシャのデジタルノマドビザは、世界各国で導入されている類似のビザプログラムと比較すると、いくつかの特徴が浮かび上がります。まず収入要件については、ギリシャの月額3,500ユーロという基準は、エストニアの約3,500ユーロと同等ですが、クロアチアの約2,300ユーロやポルトガルの約2,800ユーロよりも高い水準です。一方で、ドバイやバミューダなどの富裕層向けデジタルノマド受け入れ国と比較すると、ギリシャの収入要件は比較的手頃な範囲内と言えるでしょう。 滞在期間に関しては、ギリシャのデジタルノマドビザは初回で12ヶ月、延長で最大2年という設定です。これはクロアチアの1年（最大2年まで延長可能）と同様ですが、エストニアの1年（延長可能）やポルトガルの2年（最大5年まで延長可能）と比べると、中間的な位置づけとなります。税制面では、ギリシャは183日以上滞在した場合に税務上の居住者となりますが、デジタルノマドビザ保持者に対しては最初の7年間、外国源泉所得に対する税率を50%削減する優遇措置を設けています。この点は、完全な非課税ではないものの、長期滞在者にとって大きなメリットといえるでしょう。 ビザ申請のプロセスについては、ギリシャの二段階方式（まず入国ビザ取得後、現地で居住許可申請）は、他の多くの国と同様のアプローチです。しかし、エストニアのようにオンラインで完結するシステムと比べると、やや煩雑さが残ります。また、ギリシャのデジタルノマドビザの最大の魅力の一つは、シェンゲン圏内での自由な移動が可能になる点です。これにより、ギリシャを拠点としながら、ビジネスや観光で他のEU諸国を訪れることができる柔軟性が得られます。 ギリシャデジタルノマドビザの魅力と将来性 ギリシャのデジタルノマドビザが提供する魅力は、単なる長期滞在許可を超えたものがあります。まず、ギリシャの生活環境そのものが大きな魅力です。地中海性気候による温暖な気候、新鮮な食材を活かした健康的な食生活、そして世界的に有名な島々や古代遺跡など、豊かな自然環境と文化的資産は、デジタルノマドの創造性や生産性を高める環境として理想的です。 また、ギリシャは近年デジタルインフラの整備に積極的に投資しており、特にアテネやテッサロニキなどの主要都市ではインターネット接続の質が向上し、コワーキングスペースも増加しています。さらに、パンデミック後の観光業復興の一環として、政府はリモートワーカー誘致に力を入れており、デジタルノマドコミュニティの発展を支援する姿勢を見せています。 長期的な視点では、ギリシャのデジタルノマドビザは単なる一時的な滞在許可から、より永続的な移住への足がかりとなる可能性も秘めています。7年間の税制優遇措置は、将来的にギリシャでのビジネス展開や投資を考える日本人にとっても検討価値のある選択肢です。特に、ギリシャの不動産価格は他の西欧諸国と比較して依然として手頃な水準にあり、「ゴールデンビザ」と呼ばれる投資移民プログラムへの移行も視野に入れることができます。 デジタル技術の進化とリモートワークの普及により、場所に縛られない働き方がますます一般化する中、ギリシャのデジタルノマドビザは、美しい環境での生活と安定した就労を両立させたい日本人ノマドワーカーにとって、魅力的な選択肢の一つとなるでしょう。比較的高い収入要件はあるものの、EUへのアクセス、税制優遇、そして何より豊かな生活文化を享受できることを考えれば、挑戦する価値は十分にあります。