青い海と白い建物、豊かな歴史と文化を持つギリシャは、近年デジタルノマドにとって魅力的な滞在先として人気を集めています。2022年から始まったギリシャのデジタルノマドビザ制度を利用して、日本人がギリシャで生活する際の特有の注意点と家族帯同について詳しく解説します。
日本人がギリシャでノマド生活をする際の言語面での注意点

ギリシャでデジタルノマドとして生活する日本人にとって、最初の障壁となるのが言語です。ギリシャ語は日本人にとって馴染みのない文字と発音を持ち、習得に時間がかかります。アテネや観光地では英語が通じる場所も多いものの、地方や日常生活の場面では英語が通じないことも少なくありません。
日本人は特に、挨拶や基本的な日常会話のギリシャ語フレーズを事前に学んでおくことをおすすめします。現地の人々はあなたがギリシャ語を話そうとする姿勢を高く評価し、コミュニケーションがスムーズになります。日本人コミュニティや国際交流グループに参加することで、言語面でのサポートを得ることも可能です。
また、重要な書類や契約書はギリシャ語で作成されることが多いため、信頼できる翻訳者や通訳者を見つけておくことも重要です。特に住居契約や各種申請手続きの際には、正確な理解が必要となります。最近では、翻訳アプリやオンライン翻訳サービスも充実していますので、それらを活用することも一つの方法です。
ギリシャの生活習慣と日本との違い

ギリシャと日本では生活リズムが大きく異なります。ギリシャでは昼食後に「シエスタ」と呼ばれる午後の休憩時間があり、多くの店舗やオフィスが閉まることがあります。夕食は21時以降と遅く、夜遅くまで活気があるのが一般的です。この生活リズムに慣れるまでは、日本人にとって体調管理が課題となることがあります。
また、ギリシャは「おおらかな時間感覚」を持つ国として知られています。約束の時間に遅れることは珍しくなく、行政手続きなども予定通りに進まないことがあります。時間に正確な日本の文化で育った方には、このような文化の違いにストレスを感じることもあるでしょう。余裕を持ったスケジュール管理と柔軟な心構えが必要です。
食文化の違いも日本人にとって大きな変化点です。ギリシャ料理はオリーブオイル、チーズ、ヨーグルトなどが豊富で、日本食と比べて油分が多い傾向があります。日本食材を手に入れることが難しい地域もありますので、基本的な調味料や食材は日本から持参することをおすすめします。アテネやテッサロニキなどの大都市では、日本食レストランやアジア食材店が増えてきていますが、地方ではまだ限られています。
家族帯同でギリシャに滞在する際の注意点

ギリシャのデジタルノマドビザでは家族の帯同が認められており、配偶者や子どもと一緒に滞在することが可能です。ただし、家族を帯同する場合は所得要件が上乗せされることに注意が必要です。デジタルノマド本人の月収が3,500ユーロ以上という基本条件に加え、配偶者の場合は20%、子供は1人につき15%の追加収入が証明できる必要があります。
例えば、配偶者と子供1人を帯同する場合、最低月収は3,500ユーロ+700ユーロ(20%)+525ユーロ(15%)で、合計4,725ユーロ(約78万円)以上が必要となります。この金額は税引き後の収入であることも重要なポイントです。日本人の場合、フリーランスや個人事業主として活動している方も多いため、安定した収入を証明できる書類を準備することが重要となります。
家族でギリシャに長期滞在する場合、子どもの教育も重要な課題です。アテネやテッサロニキなどの大都市には、いくつかのインターナショナルスクールが存在しますが、数は限られており、授業料も高額です。日本語での教育を希望する場合、アテネ日本人学校(補習校)があるものの、通学可能なエリアは限定的です。オンライン授業やホームスクーリングの選択肢も検討しておくとよいでしょう。
ギリシャでの税金と社会保障に関する日本人特有の注意点

ギリシャでデジタルノマドビザを取得して6ヶ月以上滞在する場合、税務上の居住者とみなされ、所得税の納税義務が発生します。しかし、2年以上滞在する場合は50%の軽減税率が適用されるという優遇措置があります。ギリシャの所得税は最大44%の累進課税制度を採用しているため、軽減後の最大税率は22%となります。
日本人にとって特に注意が必要なのは、日本との二重課税の問題です。日本とギリシャの間には租税条約が締結されていますが、内容を正確に理解し、適切な手続きを行わなければ二重課税のリスクがあります。日本の税務署への「海外転出届」の提出や、ギリシャでの税務登録手続きを正確に行うことが重要です。特に、フリーランスや個人事業主として活動している場合は、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
健康保険についても重要な検討事項です。ギリシャのデジタルノマドビザ申請には、滞在期間をカバーする海外旅行保険やグローバル健康保険の加入が必須条件となっています。日本の国民健康保険や社会保険を維持するか、または国際的な民間保険に加入するかの選択が必要です。日本の健康保険を維持する場合、「海外療養費制度」を利用することで、ギリシャでの医療費の一部が後日還付される可能性もありますが、手続きが煩雑であることを覚悟しておきましょう。