40歳前後でも走り続ける――メッシとロナウド、持久力を支える「食べ方」

40歳前後でも走り続ける――メッシとロナウド、持久力を支える「食べ方」

2026年のワールドカップで、スペインに敗れて舞台を去る二人の背中が、いつまでも記憶に残っています。ラウンド16をフルタイムで戦い抜いた41歳のクリスティアーノ・ロナウドと、決勝の延長までピッチに立ち続けた39歳のリオネル・メッシです。勝ち負けそのものよりも、この年齢でワールドカップの中心にい続けたという事実のほうが、静かな驚きを残しました。

サッカー選手の身体のピークは20代後半とされ、30代半ばを過ぎると走力の低下は避けにくいと言われてきましたが、二人はその常識の外側で戦い続けています。その背中を支えているのは才能と練習だけではなく、もう一つ、地味で確かな土台があります。日々の食事です。

ここでは二人の食べ方を手がかりに、「一流の持久力を、食事はどこまで支えられるのか」をほどいていきます。

嘔吐が止まった日――メッシが食事を変えたきっかけ

若い頃のメッシは、試合の最中や直後に嘔吐を繰り返していて、これは本人も公に語ってきた話です。転機になったのは2014年で、イタリアの栄養士ジュリアーノ・ポーザー氏に相談したのをきっかけに、食事が根本から組み替えられていきました。

チョコレートや甘い炭酸飲料、加工食品、そして大好きだったピザまで、それまで当たり前だったものが次々と食卓から外れていきます。

その結果、体重は3キロほど軽くなり、長く悩まされてきた嘔吐も収まったと報じられていて、故障の頻度が下がったことも、30代半ばを過ぎてなお第一線という現在につながりました。メッシ自身は、劇的な治療というより「悪いものを食べるのをやめたこと」が効いたのだ、と振り返っています。

現在の担当は栄養士のイスマエル・ガランチョ氏で、その言葉はいたって明快です。魔法の薬などなく、あるのは科学と根拠と精度だけだと語る、この静かな言い切りが、二人の食事に共通する芯でもあります。

「砂糖は筋肉の敵」――血糖と炎症の話

ポーザー氏は砂糖を「筋肉にとって最も悪いもの」と言い切り、そこから遠ざかるほど身体はよくなるという考え方を貫いています。砂糖や精製された小麦粉を多くとると、血糖値は急に上がって急に下がり、その乱高下は、なだらかな坂道というよりジェットコースターに近い動きになります。この血糖のジェットコースターは、そのあとの強い眠気やだるさを呼び込みやすいと指摘されています。

さらに、糖のとりすぎは体内のたんぱく質と結びついて「糖化」という反応を進め、こんがり焼けたパンの焦げ目に似た変化を、身体の内側でゆっくり起こしていきます。この糖化が筋肉や腱の慢性的な炎症やこわばりに関わっている可能性は、まだ研究段階として語られていて、断定できる話ではありませんが、糖を控える理由の一つにはなっています。

そこでポーザー氏がメッシに残した土台は拍子抜けするほどシンプルで、水、質のよいオリーブオイル、全粒の穀物、新鮮な果物と野菜という五つが柱になっています。全粒の穀物は、白い炭水化物と違ってエネルギーをゆっくり長く出してくれるので、マラソンのペース配分に近い燃え方をします。

オリーブオイルに多いオレイン酸には炎症をやわらげる働きが期待されていて、魚に多いオメガ3系の脂も同じ方向で働きます。この「砂糖を断ち、良い脂を選ぶ」という組み立ては、まったく違う哲学で食べているはずのロナウドとも、ぴたりと重なります。

マテ茶という相棒――ただし「熱すぎない」ことが条件

メッシが試合前によく口にするのが南米のマテ茶で、甘い炭酸飲料の代わりに選ばれた一杯でもあります。マテ茶にはポリフェノールなどの抗酸化成分とカフェインが含まれ、コーヒーのように急に効いて急に切れる感じが少なく、集中がゆるやかに続くとされます。

肥満や脂質異常のある人を対象にした無作為化比較試験では、マテ茶をとった群で抗酸化の指標や善玉コレステロールが上がったと報告されていますが、まだ人数の限られた研究段階の知見にとどまります。

そのうえで、マテ茶そのものより気をつけたいのは温度のほうで、国際がん研究機関(IARC)は、65℃を超える非常に熱い飲み物を「おそらく発がん性がある」と位置づけています。これはマテ茶に限った話ではなく、熱いお茶やコーヒーでも同じで、原因は成分よりも、熱さで食道の粘膜がくり返し傷むことにあると考えられています。

つまりマテ茶は少し冷ましてから飲むほうが安心で、相棒として長く付き合うなら、そのひと手間が効いてきます。

1日6食という設計図――ロナウドの「エンジンに合う燃料」

ロナウドの食べ方はメッシとはずいぶん手ざわりが違い、1日を3食ではなく、小分けにした6食で回していきます。

2018年から2021年まで専属シェフを務めたジョルジオ・バローネ氏によれば、その狙いは血糖とアミノ酸を切らさないことにあります。高強度の練習を1日に何度もこなす身体では、燃料が切れると筋肉そのものを削ってエネルギーに変えてしまうため、少量をこまめに入れ続けることで、その取り崩しを防いでいるのだと説明されています。

主役はあくまで鶏肉で、高たんぱくで低脂肪という理由から、ロナウドはこれを「魔法の食材」と呼んでいるとされます。

ただ、意外なほど大ざっぱな面もあって、バローネ氏は、たんぱく質や炭水化物をグラム単位で量ってはおらず、食事はその日の練習量と強度に合わせて決めていた、と語っています。バローネ氏は身体を高性能な車にたとえ、どんなに良い車でも燃料を間違えれば調子を崩す、と言います。

派手な食材があるわけではなく、同じ良いものを同じ時間に崩さず続ける、その徹底こそが、ロナウドの体脂肪率およそ7%という数字を支えていると語られています。一流選手でも一般に8〜12%とされる中では、かなり低い値です。

牛乳を飲まない理由――「自然か、不自然か」

ロナウドの食習慣で栄養学の常識から少し外れているのが、牛乳を飲まないという点です。牛乳は良質なたんぱく質やカルシウムを手軽にとれる食品で、多くの選手にとっては回復の味方でもありますが、それでもロナウドは口にしません。

理由はシェフのバローネ氏の考え方にあって、人間は乳児期を過ぎても他の動物の乳を飲み続ける唯一の動物であり、それは自然ではない、という見方です。成長とともに、乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)の働きが下がる人は少なくありません。

その場合は牛乳でお腹が張ったりゆるくなったりするので、極限のコンディションを求める選手が、その不確実さを避けたいと考えるのは理解できます。

ロナウド自身はコーヒーにも牛乳を入れず、必要なときはアーモンドミルクなどの植物性で代えている、と言います。

違う道が、同じ場所に着く

二人のアプローチは、出発点からして対照的です。

メッシの食事は、不調を治すための体質改善から始まり、地中海式を土台に、消化に軽いものを適宜とっていく穏やかな設計になっています。

ロナウドの食事は、身体をつくり込むための管理で、時間を区切って頻度を上げ、規律で固めていく張り詰めた設計です。

ところが、中身をならべてみると、行き着く先はよく似ています。

どちらも精製された砂糖と白い炭水化物を遠ざけ、オリーブオイルや魚、アボカドといった良い脂を選び、加工食品を避けて、消化と一貫性を大切にしています。

派手な超食材はどちらの食卓にも出てこず、残っているのは地味で当たり前の食べ物ばかりです。

メッシの現在の栄養士が言うように、食事が二人の才能を生んだわけではありませんが、その才能を長く発揮できる身体を、食事が守ってきたことは確かです。

派手さより、続けられる普通

ここまで見てきた食べ方は、そのまま真似できるものではなく、1日6食も体脂肪率7%も、私たちの生活とは前提が違います。

それでも、二人が共通して残したものは、驚くほど普通です。

精製された砂糖と小麦粉を少し減らし、白いご飯やパンを全粒のものに寄せ、良い脂を選んでたんぱく質を抜かず、食べる時間をあまり遅くせず、水をしっかりとり、熱い飲み物は少し冷ましてから飲む。どれも新しくはありません。

一流の持久力を支えていたのは特別な魔法ではなく、地味な普通を長く積み重ねた結果でした。その普通なら、私たちの食卓にも、今日から一つずつ置いていけます。

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