オランダ移住の第一歩:主要なビザの種類と申請条件

オランダへの移住を考える日本人にとって、最初の関門はビザ(MVV:入国許可証)と滞在許可証(residence permit)の取得です。日本国籍保持者は短期滞在(90日以内)であればビザ免除で入国できますが、それ以上の長期滞在には適切なビザが必要となります。最も一般的なのは「就労ビザ」で、オランダ企業からの雇用契約が前提条件です。特に技術者や研究者などの高度技能者を対象とした「高度技能移民ビザ(Highly Skilled Migrant Visa)」は、年収条件(30歳以上で約6万ユーロ、30歳未満で約4.4万ユーロ)を満たせば比較的取得しやすいとされています。「起業家ビザ」はオランダで起業を志す方向けで、革新的なビジネスプランと十分な資金証明が必要です。パートナーやご家族との移住を考えている方は「家族帯同ビザ」が該当します。これらのビザはいずれも、申請はオランダ入国前に在日オランダ大使館で行うのが原則ですが、例外的に日本からの短期滞在入国後に滞在許可証を申請するケースもあります。
オランダ永住権への道:5年間のレジデンスパスを経て

オランダで永住権(permanent residence permit)を取得するには、原則として5年間の連続した合法的滞在が必要です。この「5年ルール」はEU加盟国共通の基準で、オランダでも厳格に適用されています。5年間の滞在中は、元のビザ目的(就労・起業など)に沿った活動を継続し、毎年の滞在許可証の更新手続きを怠らないことが重要です。永住権申請時には、安定した十分な収入があること、オランダ社会に統合されていることを証明する必要があります。特に重要なのが「市民統合試験(inburgering)」の合格です。この試験はオランダ語の読み書き能力と、オランダ社会・文化・法律の知識を問うもので、A2レベル(日常会話レベル)のオランダ語能力が求められます。日本人はEU外国籍者として原則この試験が免除されることはないため、早い段階からオランダ語学習を始めることが賢明です。永住権取得後は、ビザの更新手続きから解放され、EU域内での移動の自由も拡大します。
※2024年の重要な変更点:オランダ政府は市民統合試験の難易度を引き上げ、現在のA2レベルからB1レベル(中級)へと変更する方針を発表しています。この変更は今後数年以内に実施される見込みです。
日本人が知っておくべき特別ルートと申請のコツ

オランダには、特定の条件を満たす人向けの特別な移住ルートも存在します。「日蘭ワーキングホリデー制度」は18歳から30歳までの日本人に1年間のオランダ滞在と就労を許可するプログラムで、オランダ移住の第一歩として活用できます。「DAFT協定(Dutch-American Friendship Treaty)」は、実は日本人にも適用される特別制度で、オランダで自営業を始める起業家に対し、通常より低い投資額(4,500ユーロ程度)での滞在許可を認めています。このDAFT協定は永住権への道筋としても有効です。また、「オレンジカーペット(Orange Carpet)」と呼ばれる優遇措置では、特定の高度人材やスタートアップ起業家の手続きが迅速化されています。申請のコツとしては、IND(オランダ移民局)の公式サイトを常にチェックし、最新の要件を把握すること、全ての書類を整理し和訳と英訳を準備しておくこと、そして何より早めの行動が重要です。特に日本とオランダの両国の行政手続きのタイミングが噛み合わないケースも多いため、余裕を持ったスケジューリングが鍵となります。

オランダの永住権を取得すると、雇用契約が終了しても滞在を継続できる安定した地位が得られます。社会保障制度へのフルアクセスが可能となり、年金や失業給付なども日本人であっても受けられるようになります。また、オランダ国外に一定期間(最大6ヶ月)滞在しても永住権が失効しないという安心感もあります。さらに永住権取得後、オランダ国籍(市民権)の取得を検討することも可能です。オランダ市民権の取得には、永住権取得後さらに5年の滞在が必要で、市民統合試験のより高いレベルでの合格が求められます。ただし、重要な注意点として、オランダは原則として二重国籍を認めていないため、オランダ国籍取得時に日本国籍を放棄する必要があります。これは多くの日本人にとって大きな決断となるでしょう。両国籍を維持できる例外的なケースもありますが、非常に限定的です。永住権と市民権のどちらが自分のライフプランに適しているか、メリット・デメリットを十分に検討することをお勧めします。オランダでの新生活が、皆さんにとって実り多きものとなりますように。
この記事が、オランダへの移住を検討されている方の参考になれば幸いです。なお、ビザや永住権に関する規定は変更される可能性があるため、最新情報は必ずオランダ移民局(IND)の公式ウェブサイトでご確認ください。