地中海の宝石マルタで始める新たな働き方と生活
マルタ共和国は、シチリア島の南に位置する地中海の小さな島国です。年間300日以上の晴天、美しい海岸線、3000年以上の豊かな歴史を持つこの国は、近年デジタルノマドの間で人気が高まっています。特に2021年に導入されたノマドレジデンスパーミット（デジタルノマドビザ）により、リモートワーカーにとって魅力的な滞在先となりました。
日本からマルタへの移住を考える場合、一般的な情報だけでなく、日本人特有の視点から考慮すべき点があります。マルタは英語とマルタ語を公用語とし、英語圏の国々と比較して生活コストが低く、治安も良好です。さらに、EU加盟国であるため、シェンゲン圏内の移動も容易というメリットがあります。
しかし、日本とマルタでは文化や社会システムが大きく異なるため、事前の準備と理解が必要です。この記事では、マルタでデジタルノマドとして生活する際に日本人が特に注意すべきポイントと、家族を帯同する場合の考慮事項について詳しく説明します。長期滞在を成功させるためには、ビザの取得だけでなく、住居、健康保険、銀行口座、税金など多岐にわたる問題に対処する必要があります。
日本人デジタルノマドが直面する特有の課題と対策
マルタでのデジタルノマド生活で、日本人が特に注意すべき点の一つは言語の壁です。マルタでは英語が広く使われていますが、ビジネスレベルの英語力がない場合、日常生活やビジネスでのコミュニケーションに困難を感じることがあります。特に公的機関での手続きや医療機関での診察時には、正確な意思疎通が求められます。渡航前に英語力を向上させることはもちろん、マルタ到着後も語学学校に通うことを検討するとよいでしょう。マルタは英語学習の目的地としても人気があり、質の高い語学学校が多数あります。
次に直面するのが銀行口座開設の問題です。マルタの銀行は非居住者、特に日本人など遠方からの移住者に対して口座開設の審査が厳しいことがあります。デジタルノマドビザを取得していても、追加書類の提出を求められたり、審査に時間がかかったりすることがあります。この対策として、現地到着前にオンラインバンキングサービスやフィンテックサービス（Wise、Revolut等）の口座を開設しておくことをお勧めします。これらのサービスは国際送金や現地通貨（ユーロ）での支払いを容易にします。
税務面での注意点も重要です。日本人はマルタに183日以上滞在すると、マルタの税法上の居住者となる可能性があります。日本とマルタの間には二重課税防止条約がありますが、税務申告は複雑になる可能性があります。特に、日本の会社に雇用されたままマルタで働く場合や、フリーランスとして日本とマルタの両方のクライアントと取引がある場合は、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。マルタには日系の会計事務所もあり、日本語でのサポートを受けられる場合もあります。
また、時差の問題も見過ごせません。マルタと日本の時差は夏時間で7時間、冬時間で8時間あります。日本の会社やクライアントとのやり取りが必要な場合、この時差を考慮したスケジュール管理が求められます。特に、オンラインミーティングは早朝や深夜になることがあるため、柔軟な働き方が必要です。幸いにも、マルタは高速インターネット環境が整っており、リモートワークのインフラストラクチャーは充実しています。
家族帯同でのマルタ生活 - 教育と医療を中心に
家族を帯同してマルタに移住する場合、子どもの教育は最も重要な検討事項の一つです。マルタには、イギリス式、アメリカ式、国際バカロレア（IB）など様々なカリキュラムを提供するインターナショナルスクールがあります。ただし、これらの学校の授業料は年間1万ユーロから2万ユーロ程度と高額です。デジタルノマドとしてマルタに移住する前に、子どもの教育費用を予算に組み込む必要があります。
日本人の子どもにとって、現地校への入学も選択肢の一つです。マルタの公立学校は無料で、英語とマルタ語で授業が行われます。子どもが英語を習得するチャンスになりますが、言語の壁や文化の違いからくる適応の困難さも考慮すべきです。特に、日本の教育カリキュラムに戻ることを考えている場合は、補習校のような日本語・日本文化の学習環境を確保することが重要です。残念ながら、マルタには日本人学校や補習校はありませんが、オンラインでの日本語教育サービスを利用することは可能です。
医療面では、マルタは比較的充実した医療システムを持っています。公立病院と私立病院があり、特に私立病院では英語対応の医師も多くいます。ただし、デジタルノマドビザの要件として包括的な健康保険の加入が義務付けられています。日本の国民健康保険は海外での医療費をカバーしないため、国際的な医療保険に加入する必要があります。家族全員の医療保険コストも予算に含めておきましょう。
また、日本食材の入手も家族生活では重要なポイントです。マルタには小規模なアジア食材店はありますが、日本食材の品揃えは限られています。調味料や乾物など長期保存可能な食材は日本から持参するか、オンラインで購入することを検討してもよいでしょう。一方で、マルタは新鮮な地中海の食材が豊富で、健康的な食生活を送ることができます。家族の食習慣の変化にも柔軟に対応する姿勢が大切です。
マルタでのデジタルノマド生活を長期的に成功させるためのアドバイス
マルタでのデジタルノマド生活を長期的に成功させるためには、現地コミュニティとの繋がりが不可欠です。マルタには「Japanese Community of Malta」などの日本人コミュニティがあり、情報交換や交流の場となっています。また、「Digital Nomads Malta」などのデジタルノマド向けのコミュニティもあり、同じライフスタイルを持つ人々との繋がりを作ることができます。これらのコミュニティはFacebookやMeetupなどのプラットフォームで見つけることができます。
住居選びも重要なポイントです。マルタでは地域によって家賃や環境が大きく異なります。スリーマやセントジュリアンは外国人に人気のエリアですが、家賃も高めです。一方、内陸部の町や隣島のゴゾ島は比較的落ち着いた環境で、家賃も手頃です。長期滞在の場合、最初は短期レンタルで滞在し、実際に現地を見てから長期契約を結ぶことをお勧めします。特に家族で移住する場合は、学校や医療施設へのアクセスも考慮しましょう。
マルタの気候にも注意が必要です。夏は非常に暑く、湿度も高いため、日本の夏と同様に熱中症対策が必要です。また、冬は建物の断熱性が低いため、予想以上に寒く感じることがあります。適切な衣類や暖房器具の準備も忘れないようにしましょう。さらに、マルタは水資源が限られており、水の使用には注意が必要です。日本のように水が豊富にある環境とは異なるため、水の節約を意識することも大切です。
最後に、デジタルノマドビザの更新や将来的な永住権取得についても計画しておくことをお勧めします。マルタのデジタルノマドビザは最初に1年間の滞在が許可され、その後条件を満たせば更新可能です。長期的にマルタに滞在したい場合は、将来的な法的地位についても考慮しておくべきです。マルタはEU加盟国であるため、将来的に永住権やEU市民権を取得できる可能性もあります。この点については、移民法の専門家に相談することをお勧めします。
マルタでのデジタルノマド生活は、挑戦でもありチャンスでもあります。適切な準備と心構えがあれば、美しい地中海の島で充実したリモートワークライフを実現することができるでしょう。日本人としての視点を持ちつつ、新しい文化や環境に適応する柔軟性を持つことが、マルタでの成功の鍵となります。
