クロアチアは2021年からデジタルノマドビザの発給を開始し、世界中のリモートワーカーに人気の滞在先となっています。アドリア海の美しい海岸線や歴史的な街並み、そして比較的手頃な生活費から、日本人ノマドにとっても魅力的な選択肢と言えるでしょう。この記事では、クロアチアのデジタルノマドビザを取得するための申請手順と必要書類について詳しく解説します。
クロアチアのデジタルノマドビザ申請の方法

クロアチアのデジタルノマドビザは、主に三つの方法で申請することができます。まず一つ目はクロアチア内務省(MUP)のウェブサイトから直接オンライン申請する方法です。この方法は場所を選ばず申請できる利便性がありますが、書類の準備や手続きに不安がある場合は、他の方法も検討する価値があります。
二つ目は在日クロアチア大使館で直接申請する方法です。この方法では対面でのサポートが受けられるため、不明点をその場で解消できるメリットがあります。ただし、東京にある大使館まで行く必要があるという地理的な制約があることを考慮しておきましょう。
三つ目はすでにクロアチアに滞在している場合に選べる、現地の警察署での申請方法です。観光ビザ(90日間)でクロアチアに入国し、現地で申請するというルートを選ぶ方も少なくありません。それぞれの状況や希望に合わせて、最適な申請方法を選びましょう。
統計によると、2024年1月から9月までの申請数は1,485件で、そのうち申請を却下されたのは6.7%の99件という結果が出ています。日本人の申請で却下されたケースは0件とのデータもあり、要件をしっかり満たしていれば比較的承認されやすいビザと言えるでしょう。
クロアチアのデジタルノマドビザに必要な書類

クロアチアのデジタルノマドビザを申請するには、いくつかの重要な書類が必要です。まず最も基本的な書類として、有効なパスポートが求められます。このパスポートはデジタルノマドビザの有効期間(1年間)に加えて、さらに3ヶ月間有効であることが必要です。つまり、申請時点でパスポートの有効期限が1年3ヶ月以上残っている必要があるのです。
次に必要になるのがデジタルノマドビザ申請書です。オンライン申請の場合はウェブフォームに必要事項を入力し、大使館や警察署で申請する場合は「1A申請書」を使用します。この申請書は大使館のウェブサイトやクロアチア内務省のサイトからダウンロードすることができます。
また、十分な収入を証明する書類も必須です。具体的には、月収2,365ユーロ(約43万円)以上の安定した収入があること、または銀行残高が28,385ユーロ(約520万円)以上あることを証明する必要があります。証明方法としては、給与明細書、銀行残高証明書、雇用契約書、確定申告書などが有効とされています。フリーランスの場合は、クライアントとの契約書やインボイスなども証明書類として使用できるでしょう。
健康面での保障も重要な要件となっており、クロアチア滞在中をカバーする有効な健康保険に加入していることを示す証明書が必要です。国際的な旅行保険や民間の健康保険が対象となり、SafetyWingなどのデジタルノマド向け健康保険も有効とされています。保険期間はビザの申請期間(1年以上)をカバーしていることが条件です。
さらに、クロアチア国外の企業やクライアントとの契約を証明する書類も求められます。これはクロアチア国外からリモートワークをしていることを証明するための書類で、雇用契約書、フリーランス契約書、業務委託契約書などが該当します。会社員の場合は、海外リモートワークの許可書なども有効です。
犯罪経歴証明書も必要な書類の一つです。これは母国で犯罪歴がないことを証明する書類で、日本では警察署で「犯罪経歴証明書」を申請し、外務省でアポスティーユ(公文書認証)を受ける必要があります。この書類は発行日から6ヶ月以内のものが有効とされていますので、申請のタイミングに注意しましょう。
クロアチアでの滞在先に関する証明も必要です。滞在先の住所を証明する書類として、ホテルの予約確認書、賃貸契約書、Airbnbの予約確認書などが該当します。最低でも2ヶ月分の予約が必要とされていますが、ビザ取得後に住所を変更することも可能です。
最後に、申請料金の支払い証明も忘れてはなりません。申請料金は46.45ユーロ(約7,500円)、IDカード管理手数料は9.29ユーロ(約1,500円)、IDカード発行手数料は31.85ユーロ(約5,200円)で、合計87.59ユーロ(約14,000円)が必要です。クロアチア国内で申請する場合の料金は若干異なる場合がありますので、事前に確認しておくとよいでしょう。
クロアチアのデジタルノマドビザ申請の流れ

デジタルノマドビザの申請プロセスは、選んだ申請方法によって若干異なりますが、基本的な流れを理解しておくことが重要です。オンライン申請の場合、まずクロアチア内務省のウェブサイトにアクセスし、デジタルノマドビザの申請フォームを探します。次に、オンラインフォームに必要事項を入力します。入力時には、パスポート情報、連絡先、職業情報、滞在予定期間などの基本情報が求められるでしょう。
その後、必要書類をスキャンしてアップロードします。すべての書類は英語またはクロアチア語で準備するか、公認翻訳を添付する必要があります。申請フォームを送信すると、申請は自動的にクロアチアの関係当局(警察行政機関)に転送され、審査が開始されます。審査中に追加書類を求められることもあるため、メールをこまめにチェックすることをお勧めします。申請が承認されると、承認通知のメールが届きます。クロアチアに入国後は、最寄りの警察署で居住カード(ID)を申請し、このカードがデジタルノマドとしての滞在許可証となります。
大使館での申請の場合は、まず在日クロアチア大使館に連絡し、デジタルノマドビザ申請のためのアポイントメントを取ります。次に申請書(1A申請書)を入手し、必要事項を記入します。必要な書類をすべて準備し、アポイントメント当日に大使館に持参し、申請料金を支払います。支払い方法は大使館で確認しておくとよいでしょう。その後、審査結果が出るまで待ちます。現在は申請から承認まで数ヶ月かかることもあるため、余裕を持ったスケジュール設定が重要です。承認されたら、クロアチア入国時にビザを提示し、入国後に最寄りの警察署でID登録を行います。
クロアチア国内の警察署での申請の場合は、まず観光ビザ(90日間)でクロアチアに入国します。滞在中に最寄りの警察署(MUP)を訪れ、デジタルノマドビザの申請意思を伝えます。申請書を受け取り、必要事項を記入した後、必要書類をすべて提出し、申請料金を支払います。審査結果が出るまで待ち、承認されたら居住カード(ID)を受け取り、デジタルノマドとしての滞在が正式に始まります。
申請後の注意点と手続き

デジタルノマドビザの申請後は、いくつかの重要な点に注意する必要があります。まず審査期間については、申請から承認までの期間は、2025年の最新情報によると数ヶ月かかることもあります。そのため、余裕をもって申請し、その間の滞在計画を立てておくことが重要です。承認を待っている期間がどれだけ長くなっても、承認された日から1年間の滞在が認められるという点は安心材料と言えるでしょう。
また、クロアチアで生活するためには、OIB(個人識別番号)と呼ばれる番号が必要になります。この番号は銀行口座の開設や各種契約に必要となる重要な識別番号です。デジタルノマドビザの申請プロセスの一部としてOIBが発行されるケースもありますが、別途申請が必要な場合もありますので、事前に確認しておくとよいでしょう。
住所登録も忘れてはならない手続きの一つです。クロアチア入国後は、最寄りの警察署で住所登録(boravište)を行う必要があります。この手続きは、デジタルノマドビザが承認された後で行いますが、登録には賃貸契約書や宿泊先の証明書が必要となりますので、事前に準備しておきましょう。
滞在期間と更新に関する制限も把握しておく必要があります。クロアチアのデジタルノマドビザの滞在期間は最大1年間で、延長はできません。ただし、ビザの有効期限が切れてから6ヶ月後に再申請することは可能です。つまり、1年間のビザ滞在後、6ヶ月間クロアチアを離れれば、再度1年間のビザを申請できるというルールになっています。長期的な滞在計画を立てる際には、この点を考慮に入れるとよいでしょう。
最後に、シェンゲン協定の影響も理解しておくことが重要です。クロアチアは2023年1月からシェンゲン協定に加盟しています。デジタルノマドビザ保持者は、クロアチア国内での滞在は保証されますが、他のシェンゲン圏諸国への旅行には通常の90日/180日ルールが適用されます。これは、180日間で最大90日間までしか他のシェンゲン諸国に滞在できないというルールです。ヨーロッパ内での旅行計画を立てる際には、この制限を考慮に入れることが重要です。
クロアチアのデジタルノマドビザは、他国のデジタルノマドビザと比較しても申請プロセスが比較的シンプルで、承認率も高い傾向にあります。また、国外からの収入に対してクロアチア国内での課税がない点も大きな魅力です。事前に必要書類をしっかり準備し、余裕を持った申請スケジュールを立てることで、美しいアドリア海沿岸でのノマド生活を実現させてください。