ベトナムの医療制度の特徴と実態
ベトナムの医療システムは、公立病院と私立病院、そして外資系インターナショナル病院という三層構造で構成されています。公立病院は現地の人々が主に利用する医療機関で、医療費は非常に安価ですが、設備や衛生状態が必ずしも日本の水準には達していない場合があります。一方、ホーチミンやハノイなどの大都市には、近代的な設備を備えた私立病院やインターナショナル病院が多く存在し、これらの医療機関では日本語対応が可能なところも増えてきています。特にFV病院やファミリーメディカルプラクティス等のインターナショナル病院では、日本人医師による診察も受けられるようになっています。
医療費の相場と支払いシステム
ベトナムの医療費は、利用する医療機関によって大きく異なります。公立病院では診察料が数百円程度と非常に安価ですが、私立病院では5,000円から10,000円程度、インターナショナル病院ともなると一回の診察で15,000円から20,000円ほどかかることも珍しくありません。入院費用については、インターナショナル病院の個室を利用する場合、一日あたり50,000円以上の費用が発生することもあります。ベトナムの医療機関では、診察や治療の前に費用を支払う前払い制を採用しているところが多く、特に大きな手術や入院の際には、事前に相当額の保証金を支払う必要があります。
保険制度と日本人が注意すべきポイント
ベトナムには公的医療保険制度が存在しますが、外国人の加入は労働許可証を持つ就労者に限られています。そのため、多くの日本人移住者は民間の医療保険に加入しています。特に、インターナショナル病院での高額な治療に備えるためには、充実した補償内容の保険加入が不可欠です。また、ベトナムの医療機関では、英語や日本語が通じない場合も多いため、重要な診察や手術の際には医療通訳を手配することをお勧めします。さらに、医薬品についても日本とは異なる点があり、同じ成分の薬でも商品名が異なることや、日本では一般的な薬が入手困難な場合もあります。
渡越前の医療に関する準備と対策
ベトナムへの移住を検討している方は、まず居住予定地域の医療機関の状況を詳しく調査することが重要です。特に、日本語対応可能な医療機関のリストを作成し、それぞれの専門分野や対応可能な治療内容を確認しておくことをお勧めします。また、持病がある場合は、日本のかかりつけ医から英文の診断書や処方箋を取得し、現地での継続的な治療に備えることが大切です。保険については、日本の海外旅行保険に加えて、現地の医療保険への加入も検討すべきでしょう。緊急時の医療搬送に備えて、メディカルアシスタンスサービスへの加入も考慮に入れておくと安心です。なお、ベトナムでは季節性の感染症も多いため、必要なワクチン接種を日本で済ませておくことも、重要な準備の一つとなります。