デジタルノマドビザ申請の前に知っておくべきこと

アイスランドのデジタルノマドビザ(公式名称:リモートワーク長期ビザ)は、外国の企業に所属するリモートワーカーやフリーランサーが最長180日間アイスランドに滞在しながら仕事を続けることができる制度です。このビザを申請する前に、まず基本的な要件を確認しておきましょう。
申請資格は、EEA/EFTA圏外の国籍を持ち、シェンゲン圏への入国にビザが不要な方が対象です。過去12ヶ月間にアイスランド当局から長期ビザを発給されていないことも条件となります。また、アイスランドに永住する意思がないことを証明する必要があります。
収入要件として、月額10万アイスランド・クローナ(約10万円)以上の収入があることが必要です。配偶者やパートナーと共に申請する場合は、月額13万アイスランド・クローナ(約13万円)以上の収入が求められます。これらの収入は外国の企業や顧客からのものであることが前提です。
申請前に考慮すべき重要なポイントとして、このビザはアイスランド国内での就労を許可するものではなく、あくまで外国企業のための仕事や外国顧客向けの業務に従事することが前提となっています。また、このビザは更新ができないため、180日間の滞在後は一度出国する必要があります。
申請の流れ:ステップバイステップガイド

アイスランドのデジタルノマドビザを申請するプロセスは以下の通りです。一般的には申請から審査結果通知まで3〜4週間程度かかります。
1. まず、アイスランド入国管理局(Directorate of Immigration)のウェブサイトから申請書をダウンロードします。申請書は「リモートワークのための長期ビザ(Long-term visa for remote work)」というタイトルで提供されています。
2. 申請書をコンピュータ上で入力し、必要事項をすべて記入します。申請者のプロフィールに応じて、「リモートワーク申請者」「リモートワーカーの配偶者またはパートナー」「リモートワーカーまたはその配偶者の子供」のいずれかを選択することになります。
3. 申請書に記入後、印刷して署名します。電子署名は受け付けていませんので、手書きの署名が必要です。
4. 必要書類(後述)をすべて揃え、申請料金を支払います。申請料金は約12,200アイスランド・クローナ(約1万円程度)で、銀行振込で支払います。支払い証明書には必ず生年月日と名前が記載されていることを確認してください。
5. 申請書と必要書類一式を、アイスランド入国管理局に郵送または直接提出します。郵送先住所は「Directorate of Immigration, Dalvegur 18, 201 Kópavogur, Iceland」です。既にアイスランド国内にいる場合は、入国管理局の受付または首都圏外の地方長官事務所で直接提出することも可能です。
6. 申請が承認されると、入国管理局からメールで通知が届きます。承認後、アイスランドに入国したら入国管理局にメール([email protected])で連絡し、ビザの発行手続きを行います。ビザは入国日から有効となります。
なお、申請処理中に追加書類の提出を求められることがあります。また、日本国籍者の場合、観光目的で90日以内の滞在であればビザなしで入国できるため、まず観光ビザで入国し、現地で申請することも可能です。ただし、シェンゲン協定に基づき、180日間のうち90日を超えて滞在することはできませんので注意が必要です。
必要書類リストと準備のポイント

アイスランドのデジタルノマドビザを申請するためには、以下の書類が必要です。すべての書類は英語またはアイスランド語で提出する必要があります。
1. 申請書:アイスランド入国管理局のウェブサイトからダウンロードできる公式申請書。電子入力後、印刷して署名が必要です。
2. パスポートのコピー:有効期限がビザの滞在期間終了後、少なくとも90日以上あることが必要です。個人情報ページと署名ページのコピーを提出します。
3. パスポート用写真:35mm×45mmサイズの最近撮影されたもの。背景は白色で、中立的な表情のものが求められます。
4. 収入証明書:外国の企業との雇用契約書、フリーランス契約書、または収入を証明する銀行明細書など。最低月収要件(個人で10万アイスランド・クローナ、パートナーと共同で13万アイスランド・クローナ)を満たすことを示す必要があります。
5. リモートワーク証明:外国企業での雇用を証明する雇用証明書、または自営業/フリーランスの場合は業務内容と収入源を示す書類。アイスランド国内での就労ではなく、外国企業や顧客向けの業務であることを明確に示す必要があります。
6. 健康保険証明:アイスランド滞在中の医療費をカバーする健康保険の加入証明書。保障額は最低200万アイスランド・クローナ(約200万円)以上である必要があります。
7. 申請料金支払い証明:12,200アイスランド・クローナの申請料金の支払いを証明する銀行振込の明細書。
8. 滞在計画書:アイスランドでの滞在予定期間と滞在目的(リモートワーク)を説明する簡単な計画書。永住する意思がないことを明示する必要があります。
9. 無犯罪証明書:過去5年間に居住していたすべての国からの証明書が必要です。6ヶ月以内に発行されたものを提出してください。日本の場合、警察署で「犯罪経歴証明書」を取得し、外務省によるアポスティーユ認証を受ける必要があります。
10. 宿泊証明:アイスランドでの滞在先を示す書類(ホテル予約確認書、賃貸契約書など)。申請時点で未定の場合は、入国後2週間以内に入国管理局に通知する必要があります。
家族と共に申請する場合は、追加で結婚証明書(配偶者の場合)や出生証明書(子供の場合)なども必要になります。これらの証明書にも、アポスティーユによる認証が必要です。
申請後の流れと滞在中の注意点

申請書類を提出後、審査が始まります。アイスランド入国管理局による審査には通常3〜4週間かかりますが、混雑期や書類に不備がある場合はさらに時間がかかることがあります。
申請が承認されると、入国管理局からメールで通知が届きます。承認通知を受け取ったら、アイスランドに入国し、入国日から180日間の滞在が許可されます。入国後は入国管理局にメールで連絡し、ビザの発行手続きを行います。
デジタルノマドビザ保持者は「中長期滞在者」には該当しないため、在留カードは発行されません。また、住民登録もできないため、住民税などの支払い義務もありません。ただし、滞在が180日を超える場合は、アイスランドの税法上の居住者とみなされ、全世界所得に対する課税が発生する可能性があります。
滞在中に一時的に出国し、再入国することも可能です。出国時に有効な旅券を提示し、再入国の意思を申告することで、みなし再入国許可制度が適用されます。ただし、180日の滞在期間内に帰国する必要があります。
滞在期間が終了した後、再度アイスランドでデジタルノマドとして滞在したい場合は、いったん出国し、新たに申請する必要があります。ビザの延長はできませんので注意してください。
住居については、デジタルノマドビザで滞在する場合、通常の賃貸契約を結ぶことが難しい場合があります。6ヶ月という期間は一般的な賃貸契約には中途半端であり、多くの賃貸業者が契約を敬遠する可能性があります。そのため、Airbnbなどの短期賃貸物件、サービスアパートメント、ホテルなどの利用を検討するとよいでしょう。
最後に、アイスランドは物価が非常に高い国として知られています。特に住居費、食費、交通費などは日本と比べても割高です。十分な資金計画を立てた上で、滞在を検討することをお勧めします。